私の赤ちゃん

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✳︎✳︎✳︎ 毎年10月に伝統行事「ざくろ祭り」が各地で行われている。これは鬼子母神を参拝し、子どもの健やかな成長や子孫繁栄を願う祭りだ。祭りでは様々な屋台と共にざくろ屋も並ぶ。ざくろ屋では1つ100円で真っ赤に熟れたざくろを売る。参拝客はざくろを2つ買い、それを鬼子母神に供える。願い事をしたあと、寺でとれたざくろを1つもらう。そのざくろを食べると、子宝や子どもの健やかな成長に恵まれると言われている。 この祭りは鬼子母神が鬼神から善神となった伝説が由来している。鬼子母神は子どもを500人持つ美しい女神だった。鬼子母神は己の子どもたちが元気に育つようにと、人間の子どもをさらっては子どもたちに与えていた。そんな鬼子母神を恐れた人間たちは、お釈迦様に相談した。お釈迦様は子をさらわれた人間を哀れみ、鬼子母神が特に可愛がっていた500番目の末っ子を隠してしまった。 鬼子母神は末っ子が居なくなったことに気づくと、嘆き悲しみお釈迦様へ助けを求めた。 お釈迦様は、「500人も子どもがいるお前が子を1人なくしただけでこれほど悲しむなら、数少ない子をさらわれた人間たちの悲しみは如何許りか」と説いた。 お釈迦様の言葉に鬼子母神は気持ちを改め、人間を含む全ての子どもたちを守ることをお釈迦様に誓い、子を守る神となった。そしてお釈迦様は鬼子母神に末っ子を返してあげたという。 種の多さが子孫繁栄を、そして魔障を払うと言われているざくろの実を鬼子母神は右手に持ち、多くの子どもたちを守っているという伝承から、鬼子母神の祀られた寺にはざくろの木が植えられている。 参拝が終わり、寺の住職から差し出されたざくろの実を勢いよくその場で食らいつき、周囲をざわつかせた瀨在真知子も、子宝を願う参拝客の1人だった。
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