午後3時のリプレイ

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1

午後3時のリプレイ

ここは俺が勤めている会社の事務所である。 「もう3時か」 俺は壁の時計を見て、つぶやいた。この時間、ほかのメンバーは出払っていて、事務所の中には俺一人しかいない。 さて、この書類だけ仕上げたら、ちょっと休憩するか。 俺はそう思いながら、書類にペンを走らせた。 その瞬間、頭に衝撃を受けた。 なんだ! 何が起こった! 叫び声をあげる間もなく、意識は薄れていった…… * 次に気がついた時、俺は机の前に座っていた。 「あれ……あっ!」 俺はさっきのことを思い出した。誰かに頭を殴られ、気を失っていたのだ。 くそっ、誰に殴られたんだろう? 俺はそんなことを考えながら、ふと壁の時計を見た。もうすぐ3時になる。 「もうすぐ3時か。うん? 3時?」 おかしい。さっき3時過ぎてたよな。俺は机の書類を見た。殴られる前にペンで書いていた部分が書き込まれていない。 まさか! 信じがたいことだが、状況はそれを指している。そう、タイムスリップだ。「やり直し」「リプレイ」「リピート」色んな呼び名はあるけれど、要するに俺はもう一回、3時前の時点に戻ってきたってことだ。 この状況を合理的に解釈するにはそれしかない。既に3時は過ぎてしまったが、二度目の3時を経験したことになる。 そこまで考えた俺は、恐ろしいことに思い至った。 そうだ! 同じ未来を繰り返すなら、俺はこれから何者かに殴られるはずだ! 「よし!それが分かっているなら、犯人を突き止められる!」 そう言ってガッツポーズをした瞬間、何者かに後ろから殴られ、俺はまた意識を失った…… * 次に気がついたとき、俺は机の前に座っていた。 「あっ……」 最初はぼんやりしていた頭だったが、やがて正気を取り戻した。俺は慌てた時計を見た。 「やっぱり3時前だ!」 またリプレイしたみたいだ。これはもう本物だとしか思えない。 俺はだんだん怖くなってきた。もしかして、俺は一生、これを繰り返すのか? 永遠にこのループから抜け出せなかったらどうしよう…… 俺の不安は最高潮に達した。しかし、もう一人の俺が頭の中で囁いた。 「そんなことしてる場合じゃないだろ!」 そうだ! そうだった! 俺はこれから殴られる。犯人だけはなんとしてでも見つけないと。 そこまで考えたとき、何者かに後ろから殴られ、俺はまた意識を失った…… * 次に気がついたとき、俺は机の前に座っていた。 俺はすかさず時計を見た。やはり3時前だ。俺も流石に馬鹿じゃない! もういい加減にやることは分かってる。犯人探しだ。 3時過ぎたら、周りに気を配いつつ、犯人を探す! 俺は3時過ぎたのを確認して、辺りを見渡した。誰もいない。机がずらりと並んでいるだけで、閑散としている。 おかしいなあ。もしかして、何度か繰り返しているうちに未来が変わってしまったのだろうか? そこまで考えたとき、何者かに後ろから殴られ、俺はまた意識を失った…… * 次に気がついたとき、俺は机の前に座っていた。3時前だ。俺は辺りを見渡したが、誰もいない。3時過ぎた。俺は、机の下に誰か隠れているのではないかと目星をつけ、右隣の机から順に調べて行った。 二つ右隣の机の下を覗きこんだとき、何者かに後ろから殴られ、俺はまた意識を失った…… * 次に気がついたとき、俺は机の前に座っていた。3時前だ。3時過ぎたので、俺は今度は左隣の机から順に調べて行った。 二つ左隣の机の下を覗きこんだとき、何者かに後ろから殴られ、俺はまた意識を失った…… * 次に気がついたとき、俺は机の前に座っていた。 俺は考えた。もうすぐ殴られるんなら、この場で、このままぐるぐる四方を見渡し続けていれば、殴られることはないんじゃないか? 俺は頭だけぐるぐると動かし続けた。 すると、事務所のドアが開いて、所長たち数人が出先から戻ってきた。 「お前、何、頭を回してんの?」 俺の様子を見て笑い転げている。 「あ、所長、早かったですね!」 「何、言ってるの? もう5時前だよ」 「はあ? え、3時過ぎじゃないんですか!」 俺は慌てて時計を見た。5時前だった。 そんな…… 「あれ? お前、この書類まだ仕上げてないの? さっきまで何やってたの?」 あ、そうだ。書類のこと、すっかり忘れてた。 「所長! 実は不思議なことが起こったんです」 俺は所長たちに一部始終を話した。 「君、ちょっと疲れているようだね。サボった言い訳をするなら、もうちょっとマシな理由を考えたまえ」 まるで信じてもらえなかった…… 夢でも見てたのかなあ……。でも、めっちゃ頭痛いんだけど。 * 「面白かったね」 「うん。なんか缶蹴りみたいだったね」 事務所のある建物を出て、会話しているのは近所の悪ガキ二人だった。 「リプレイごっこがこんなに楽しいとはね」 「うん。あのオッさんが馬鹿で良かったよ」 この二人は事務所にそっと忍び込むと、機を見て彼の頭を殴り、気絶したのを確かめると、時計を3時前に戻して、揺すり起こしていたのだ。 ペンは消せるボールペンにすり替えておいたので、書類の一部も消したけど、書類のほうの小細工は一度だけで済んだ。 「机の下に隠れるのは、危なかったけど、たまたま見つからなくて良かったね」 「まあ、一度調べたところは見ないだろうから、二度目の机のチェックは楽勝だったけどな」 「見つからないように気をつけつつ、頭を殴る。スリル満点だったね。本当、缶蹴りみたい」 「時計を毎回戻すのは面倒だったけどな」 「勝負はどっちが勝ったんだっけ?」 「俺が3回。お前も3回。結局、引き分けだったな」 「また、やろうよ」 「そうだな。でも、あんな馬鹿なオッさんは、なかなかいないだろうな」
/1

最初のコメントを投稿しよう!