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「……類。なんか調子悪い?」  類は、飲み会は嫌いだけど飲むのは好きで、それも初めて会った時のような洒落た店じゃなく、どっちかといえばオヤジくさい焼鳥屋みたいなのが好きだ。  一人じゃ入りにくいから、と言うけど、もしかしたら普段も同性の友達とつるむこともなく、一人で居るのかもなと思った。  ビールが飲みたいと言っていた割に、しかめ面をしている類に言うと 「……なんでもない」 と答える顔は、眉間に皺が寄っている。 「どこか具合悪いなら、今日は帰る?」 「別に無理なら来ないから」  半年経っても、こういう態度は変わらない。 「なら、いいけど。でも、あんまり食べてないから」  目の前の串盛り合わせを恨めしげに睨んで、類は言った。 「歯が痛いの」 「いつから?」 「少し前から時々気になってたんだけど、昨日からちょっと……」 「もちろん、歯医者は行ってない?」  黙って類は頷いた。
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