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「だが、流石の俺も……紫澤に見せた颯斗の屈託ない自然な笑顔を見たら……俺には颯斗を心から幸せにすることは無理かもしれないって。珍しく自信無くしたぜ」
自ら視線を外し苦々しく呟く翔琉の言葉に、そんな些細なことで自信を無くしてしまう翔琉に続けて驚きを隠せなかった。
同時に、俺はいつどこで紫澤とのツーショットを翔琉に目撃されていたのかを焦り始める。
最も、傘の中でキスされた以外は何1つやましいことは無いのだが。
「――前に、半日オフが取れそうだと言ってた日があっただろ?」
「はい」
「サプライズで颯斗に会いに行こうと思って、カフェに行ったんだよ。そしたら、俺の席に紫澤がいて……しかも、お前が接客しながら年相応の顔して笑ってたんだよ。……そんなの見掛けたら正直ショックだったし、悔しかった。絶対俺の前では、そんな嬉しそうな顔見せたことないからな……俺だって、そんなことで自信を無くすとは思ってもみなかったんだ。思えば、今まで誰に対しても自発的に動くことは無かったからな」
悔しそうな表情の翔琉は、未だ俺と視線を合わせること無く思いを吐露する。
同時に、ツーショットを目撃されたのがバイト中のことだと知った俺は、何もやましいことは無い為心より安堵する。
ふと、翔琉の言葉を聞いていた俺の頭に漢字2文字のとある言葉が思い浮かぶ。
人気俳優である翔琉がまさか……
一瞬そう思ったが、次第に俺は正解を確かめずにはいられなくなり、恐る恐る言葉を発した。
「……えっと、それはつまり……“嫉妬”したってこと、ですか?」
次の瞬間、翔琉はすぐさま俺へと背を向けてしまうがその耳はとても赤く上気しており、彼が今どんな表情をしているのか確認せずとも分かってしまう。
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