彼の赤好き10%

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彼の赤好き10%

セミがミンミンとうるさい夏の夕暮れ。 サラリーマンのおじさんや、近所の主婦の皆さんが今日も1日終わったぞ、とばかりに家路に着く時間帯。 私はといえば、それとほとんど同じで、学校の部活を終えて帰る女子高生。 やっと1日が終わり、この道をまっすぐ帰れば涼しい家が待っているというのに、このセミ達ときたら。 「朝から夜までしっかり、大音楽会ですね…」 さっきまで私だって音楽室で楽器を吹いていたけれど、このセミ達には勝てない。 はぁー、と大きなため息をつけば、私の額の汗がスーッと流れるのがわかった。 暑い。とことん、暑い。 あと5分も歩けば家に着く。 少しでも早く涼しい家に帰りたい私は、他の人に比べると歩くスピードは早い方だと思う。 よし、あと少し、とその足を更に早めようとしたとき。
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