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「あなたの居場所はどこですか?」9
「シオ先輩ってさ、いつも忙しそうだね」
「工藤さんのとこも、お忙しいじゃないですか」
「うーん、まあ……自分のとこが暇だ、とは言えないのは確かだけど。そういうんじゃなくてね」
そこで言葉を区切っては、チラリと工藤さんは私のほうを見つめる。
「まあ。後々、かな……」
「……?」
「それよりも、ねえ。また出店するんだって? 少し前にもしたばっかなのにねぇ」
「ええ……。新店対応が見事に重なりまして」
「ああ、だから普段以上に集中してたのね。声を掛けても気づかないし」
「そ、それは……すみません。集中すると周りが見えなくなるもので……」
「気にしないで。いつもの事だもんね。――あ、ほら。ランチ来たよ」
工藤さんの言葉の通り、すぐ目の前には熱々のドリアが運ばれてきた。
ジュウジュウと音をたて、芳ばしいチーズの香りが辺り一面に広がると、思わず表情が綻んだ。
「ふふっ、その反応だと温かい料理自体、久しぶりなのかな」
「はい。夜も遅いので、パスタサラダとか太りにくいモノばかり選んでるんです」
「やっぱり……。ほら、冷めないうちに食べちゃお」
勧められるまま、ドリアを口に運ぶ。
美味しさの代償に、舌を火傷しながらも温かい食事がゆっくりと体内を温めていく。
「シオ先輩」
「はい?」
不意に声を掛けられ、正面に座る工藤さんを見る。
「うん、と……ね」
パスタを食べる手を止め、先ほどまでとは打って変わり言葉数が少ない。
「工藤、さん?」
「話が、あるんだ。シオ先輩」
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