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ひととおり静夏から話を聞かされて、僕は大きく嘆息した。
「それって、本当に呪いなのかな?」
と、感じた疑問を口にした。
「どういうこと?」
「思い込みってヤツは時に全く無関係な事柄の中に、身勝手な関係性を見出してしまうものだよ。女子生徒は呪われているって思い込みが、頭の中で、彼女に起こる不幸の全てを呪いのせいだと勝手に繋げてしまうんだ。つまり、階段から落ちたってのも、いったん呪いと切り離して考えてみたらどうだ?」
実際の呪いにまつわるケースの中でも、そういう勝手な思い込みは少なくない。
だが、
「……でも……」
と、静夏は全然納得してはいない顔だ。
「何かあるのか?呪いと思わせる、もっと決定的な……?」
静夏は頷いた。
そして……。
……………………。
蝉の声を切り裂くように、講義開始のチャイムが鳴る。
空想を断ち、現実へと引き戻す鐘の音だ。
「ごめん。講義に行かなきゃ」
そう言って僕は静夏に背を向けた。
……嗚呼……。
僕はきっと壊れた人間なんだろう。
だって、僕はこんなにも嗤ってしまっている。
イジメにあっているという少女を悼む気持ちはある。人並みにはあるつもりだ。
ただ、それとは比べ物にならないほどの『呪い』への興味が、それ以外の全てを押し退けて僕の心に在る。
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