明晰夢の見方

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 仕事が忙しい。今に始まった話じゃない。  会社は働き方改革の一環だと言って、申請なしで残業ができる時間を21時から20時にしたが、仕事量は減ったわけではない。申請を出して、結局21時まで残業をしている始末である。  それでも仕事が終わらない。しかし残業しすぎると法定がどうのとか言って、上司に怒られる。  だから上司が来る前に出社し、一時間ほど出勤の打刻をせずに働いている。IT業界はどこもそうだと、いつも同じくらいの時間に出社する先輩社員が愚痴っていた。  朝出社したら、今日の21時までにできなかったT社のプログラムを修正して、午前中にメールで完了連絡をしなければならない。  T社の納期はいつも翌日の午前中までだ。夕方に依頼してきてよく言う。  しかし、これが終われば当分T社からの依頼はないだろう。その間にB社とK社のプログラムの大規模改修に着手してーー  考えごとをしている間に、シャワーを浴び終えた。  洗う順番を体が覚えていれば、寝ながらでも風呂に入るという、シャワーを浴びるだけの一連の動作はできる。  じゃあ晩御飯を食べ終わったら、寝ながら風呂に入って、ベッドでちゃんと寝ればいいじゃないか。いやいや、晩御飯を食べ終わってからすぐに立ち上がったり、服を脱いだりするのが面倒臭いのだ。  自分でも、この習慣は改善したほうがいいと思う。  トータルの睡眠時間は申し分ないが、疲れがまったく取れない。仕事に支障をきたすほど夜更かしに関してアマチュアじゃないが、行き帰りの車の運転中に睡魔がきてしまう。  一週間前の話になるが、あの日の朝は危なかった。  タイミングが悪く、ちょうど瞼が重みに耐えかねていたときに、死角からジョギング中のおじさんが車の前に飛び出してきたのだ。  もちろん歩行者優先だから運転側が悪いのだが、あれは肝を冷やした。  急ブレーキをかけて、なんとか接触せずに済んだ。車体を少し横にそらしていなけれは、轢いていたかもしれない。
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