明晰夢の見方

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 スタジオでは、労働問題に詳しい弁護士と称される白髪の男性がしゃべっている。 『先週事故で亡くなった男性が勤めていた会社では、過重労働に関する調査が進んでいるそうですが、IT業界では人不足が加速しています。多忙に耐えきれずに人が辞めるんですが、辞めた人の仕事を残った人が引き取らなければならないため、さらに残業が増えるんです』 『でも、働き方改革の一環で、法定残業時間には厳しくなりましたよね?』  女性アナウンサーが相槌を打つ。 『それでも仕事が減るわけではありませんからね。上司に隠れてサービス残業をしているのが現状です。上司も気づいてるんでしょうが、黙認してるんですよ』 『なるほど』  画面は女性アナウンサーをセンターに捉える。『えー、最近相次ぐ、居眠り運転による交通事故。先週車での出社途中に、ジョギング中の男性との接触を避け電柱にぶつかり死亡した運転手の斎藤和樹さんの事故をきっかけに、大手IT関連会社・DENNOでは、社員の労働環境について、引き続き調査が進められる模様です』  DENNOとは和樹の会社であるが、そんな調査なんてあっただろうか。和樹が務めているのは子会社だから、調査が後回しにされているのかもしれない。  和樹とその周りの労働環境こそ調査されるべきなのに。弁護士の言葉には、いくつも頷かずにはいられない点があった。  歯磨き粉を吐き出し、口をゆすぐ。
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