当たり屋

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ああ、考えていたら遮断機が開きそうだ。急がなくては。 よしあの子にしよう。小雨と傘のおかげで前が見えていないように思える。 俺は素早く自転車の前に飛び出した。 キキキー。 金属のブレーキの音が響き渡る。 ドンッ。 俺の身体に自転車のタイヤがぶつかる。 よし上手くいったぞ。 「痛ててて」 俺は電車のレールの上に転がる。 「すみません。大丈夫ですか?」 「大丈夫じゃあないよ。病院に行かなくてはいけないな。スーツもビショビショだ。会社も休まなくては。どうしてくれるんだ?」 「救急車を呼びますか?」 「そうだな。でもどうにか歩いて病院には行けそうだ。ここに居たら電車が来るよ。場所を移動しよう。そこの道の脇に行こう」 いつまでもぶつかった現場にいる事は避けたほうがいい。当たり屋の本能がそう告げるのだ。 「僕はどうしたら?病院に着いて行った方がいいですか?」 「いや、一人で行けるよ。病院代はだしてくれるんだろうね。君が悪いんだから」 「えっ?でも、飛びだして来たのは・・・」 「徒歩と自転車だよ。自転車が悪いのは決まっているじゃないか。立派な前方不注意だよ。それに傘さし運転は道路交通法違反だ」 俺は何時も言っているセリフを間違えない様に喋った。今回も上手くいきそうだ。
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