当たり屋

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「どうしたの?和樹?」 ふいに後ろから声がした。 まずい。この子の知り合いか? 「お母さん、僕、人にぶつかっちゃったんだ」 どうやら、母親が車で通りかかってしまったようだ。小雨の中、ハザードを点けて車が止まっているのが解る。高い高級車だ。話を誤魔化して逃げようかな。 でも待てよ、金持ちみたいだ。 うまくいけば母親からも金を巻き上げる事が出来るぞ。 「痛ててて。この子がぶつかってきたんです」 「すみません。家の子が、病院まで乗っけていきましょうか?」 「そうですね。ぶつかった衝撃で首を捻ったみたいです」 「まあ。首を・・・それは大変です。どうぞ車に乗ってください」 俺は大げさに痛がって見せながら車に乗った。新車の良い匂いがした。 「いきつけの病院はありますか?」 「いや、無いよ。首が痛いから整形外科が良いのじゃないかな」 車で当たり屋をするときは首が痛いというのが一番良いと聞いた事がある。首なら病院に行っても嘘がバレないのだそうだ。 「じゃあ、近くの病院を探してみますね。すみません、本当に」 俺は心の中で笑った。何万儲かるかな。数ヶ月病院に通ってやるぞ。
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