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「でも、ママは気にしないと思うけどな」
仕事の時以外は、夢見る乙女のママだから、パパが傘でもきっと受け入れるだろうに、と私は思った。
何しろ、現在のママの想像の中のパパは、『天国で、昔飼っていたプレーリードッグのプレ衛門とドグ乃介と三人仲良く畑仕事をして暮らしている』なのだ。パパが傘になったってきっと受け入れられる。
「でもやっぱり、傘の状態で会うのは恥ずかしいから、黙っておいてくれ」
傘のパパはそう言ったので、私は従う事にした。
傘をパパと呼ぶのは、ママの耳に入るとちょっと、と言うことで、話し合って
『かさあさん』(お父さん、のリズムで)呼ぶ事にした。
さて、それはそれとして、私は恋の使命がある。
パパの魂が入っていようといまいと、私はワニと錦鯉の柄の折り畳み傘を、先輩の前で広げる必要がある。
「『かさあさん』さあ、私の憧れの先輩の持ってる傘と同じだから、恋の応援をしてもらいたいんだけど……」
最後まで言い終わる前に、傘の眼が物凄く嫌そうな顔になり、くしゃくしゃの目付きになり、眉間らしき箇所にシワが寄った。
「……やっと会えた娘に一番にしてやれる事が、恋の応援かよぉ……」
「な、なによ。傘に入られちゃったのは仕方ないけど、元々の目的はそっちなんだから!」
「……でも、大丈夫なのか南菜都。南菜都は子供の頃からすっごく引っ込み思案だし、人見知りもあるし、初めて話す人の前だと声ちっちゃいし、緊張しがちだろ?」
かさあさんは、ずけずけと私の欠点を言い当てた。私は怒りに任せて傘を閉じ、傘袋に入れ、お風呂に入り夕食を食べに行く事にした。
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