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思っていたよりもずっと幼い。
目の前に立つ少年を見て、ミシェルは息を呑んだ。
色素の薄い金髪は手入れをすればそれは美しく艶のあるものになりそうだが、今は勝手気ままに跳ね上がり一度も櫛を入れたことがないみたいにぼさぼさである。
それでいてそこまでの不潔感を感じないのは若さと元の髪質が見せる美しさ故か、それを補うほどの彼の整った顔立ち故か。
彼は眉も目も鼻も口も、まるで人形のように整った美形だった。
その瞳は猫に似ていると、ミシェルは思った。
アーモンド形の大きな瞳は、どこまでも深い琥珀色だ。
つい見入ってしまうほどに美しい色ではあるが、その瞳には何の光も宿っていない。
あるのは闇だけだ。
そのせいで少年の表情は全くの無に等しかった。
十代半ばとは思えない、残酷な瞳だ。
そして何より、血塗れのその姿に鋭い胸の痛みが襲う。
馬鹿か。
同情なんてものは相手に対する侮辱行為だ。
個人的な感情で抱いていいのもではない。
言葉にできないやるせなさを押し込めて、こちらを無言で見上げる少年にミシェルは笑みを浮かべた。
「怪我の手当てをしよう。車に乗って」
そう言えば少年は視線をまっすぐにこちらに向けてきた。
こちらの真意が分からないのだろう。
何せ彼の仕事の帰りにこうして迎えが来ることは今までありはしなかったのだから。
「俺のことは知っているかい?」
こくり。少年が頷く。
その瞳は感情の宿らない、無機質なものであった。
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