第1章 『屑』と『愚図』

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第1章 『屑』と『愚図』

side 桜城 優(サクラギ ユウ) 『でさ、昨日付き合った女さぁ…喘ぎ声くっそ下手なんだよ。すげぇわざとらしくて萎えた!マジで時間無駄にしたわ……。』 …………とまぁこんな風に、いつか女に刺されて死んじまいそうなこのクズ男…。 今オレと電話しているコイツこと八重樫 友紀(ヤエガシ トモキ)こそ、オレの幼なじみ兼親友で……オレの初恋であり、片想いの相手だ。 「へぇ〜〜、別にいーじゃんか。あの子、うちの学校で3番目に可愛いって噂の後輩だろ?見た目良いんだし我慢して付き合ってやれよ。ってか、昨日の今日で手ェ出すとかサイテートモキくんw」 コイツとこんなやり取りをするのは、もう慣れっこである。 幼なじみ歴早15~6年。 生まれた時からずっと一緒に居るものの、未だに飽きも来ず、嫌いにすらなれない。 トモ(オレは小さい頃からコイツの事をトモと呼んでいる。)の病気(オンナズキ)が発症したのは、中二の夏頃だった。 オレと一緒に行った花火大会の帰りに、頭の悪そうな女に逆ナンされてワンナイトラブを経験してからというもの、人が変わったように女を取っ変え引っ変えし始めてしまったのである。 いくら注意した所でオレの言う事を聞くような奴じゃないから、そもそも注意しようとすら思いもしないのだが……。 流石に歴代の彼女の愚痴を聞かされるのは、精神的な意味でダブルに辛い。 1つ目の理由は、オレがガチガチのゲイだということ。 興奮すらしない生物の身体についてあーだこーだ言われても、正直気持ち悪いだけだ。 聞いた後は、いつも吐き気が込み上げてくる。 2つ目に、オレがトモを好きだということ。 好きな人の惚気だとか嫌いなタイプだとか、自分以外の奴の事が好きで、興奮しているという話を聞いて誰が幸せだろうか。 というかそもそも、異性しか恋愛対象と見ていない時点でオレの心はブレイク寸前である。
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