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「……ぁ……な、んだ……」
重い瞼を開けることは叶わず、でもなんとか質問を口にする。
ぬるり……。
先程と同じ感触に続いて、ぴちゃ、と言う水音が鼓膜を震わせ、ぞくり、と寒気が襲って来る。
「大丈夫。時計などというものはもう必要ありません。こんなに綺麗で、こんなに繊細……これはどうかしら……ふっ……」
「―――っ!」
熱い中に指が飲み込まれた、と思った瞬間に、ちくり、と指先に衝撃が走った。
「指先も……おいしい……んっ……」
「な、んだ……」
おいしい?
じわじわと、指先から力が、熱が、奪われていく感覚。まるで痺れた腕を無理矢理持ち上げたような冷たさが伝わる。
ぴちゃり……。
水音が、鼓膜を震わせた。
「大丈夫。おやすみ、ください」
ぴちゃぴちゃと音を立てながらとぎれとぎれに言い、最後にぬるっと根元から辿られた指先。それごと熱に包まれて、背中に柔らかい振動が伝わって来る。
赤ん坊のように、背中をあやされ手を握られているんだと遠くで思った。
ぽん、ぽん……
「いい子。もう少しですからね……」
うっすら浮かんでいた意識は、完全に
落ちた―――――――――――
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