19人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
―――
―――――
―――――――苦しいっ!!
体の上が重いし、恐ろしく拘束感がある。左腕を動かして、重みの形を確かめようと(……幽霊とかだと、困る)必死に瞼もあげた。
……誰かが、口と鼻を、塞いでる。
口は唇で。
鼻は白い指先で。
「ぐっ………」
ぱしっと相手の額を左掌で捕らえると、力任せに押し返した。
「わっ……」
「っだ、だれ、だ………」
苦しさから、息も絶え絶えに、尋ねる。どうやら俺は布団にいて、掛け布団の上から『女』がのしかかっていたみたいだ。むくり……と起き上がった『女』は、首を傾げて俺を見ていた。風が舞い込んで来て、桜の花びらが流れ込んでくる。
風の舞い込む方に少し視線を移すと、昼間見た景色と同じだった。
………昼間?
外はもう、闇色に。
大量な薄桃が雲のように浮かび上がって見えた。
ギシ……
「っ!う、動くな!」
外に気を取られていたら、『女』が動いた。長い黒髪は豊か。横座りのように、俺の足辺りに寄り掛かっているにも関わらず、畳に横たわる程の長さだ。
「淳真様」
「動くな。なんだ、お前」
制止したにも関わらず、再び迫ろうと動き始めた『女』に、キツイ視線を送る。そんな視線など気に止めた様子もなく
「月緒だよ。さっき言ったのに」
きょとん、としながらジリジリと近寄り
――――――トンっ
両肩を押された。
「なっ?!………何がしたいんだ……」
完全に『月緒』と名乗った女に押し倒された俺は、上からじーっと見つめているそいつに聞いた。抵抗しようにも、まだあの『香り』の効果が残ってい……る、と思った矢先に、月緒から漂い始めた。
「淳真様に口付けしてたのに」
「ちか…よるな……」
……と、言うか、今『口付け』って言ったか?空気の出入りのない、人工呼吸みたいな、アレが口付け?
「あのね、月緒は淳真様のお嫁さんで、今からその約束するの」
ふいに軽くなったと思ったら、立ち上がった月緒が、
「おまっ……なに……」
「? 着物脱がないと、出来ないよ?」
最初のコメントを投稿しよう!