━━━第二夜

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――― ――――― ―――――――苦しいっ!! 体の上が重いし、恐ろしく拘束感がある。左腕を動かして、重みの形を確かめようと(……幽霊とかだと、困る)必死に瞼もあげた。 ……誰かが、口と鼻を、塞いでる。 口は唇で。 鼻は白い指先で。 「ぐっ………」 ぱしっと相手の額を左掌で捕らえると、力任せに押し返した。 「わっ……」 「っだ、だれ、だ………」 苦しさから、息も絶え絶えに、尋ねる。どうやら俺は布団にいて、掛け布団の上から『女』がのしかかっていたみたいだ。むくり……と起き上がった『女』は、首を傾げて俺を見ていた。風が舞い込んで来て、桜の花びらが流れ込んでくる。 風の舞い込む方に少し視線を移すと、昼間見た景色と同じだった。 ………昼間? 外はもう、闇色に。 大量な薄桃が雲のように浮かび上がって見えた。 ギシ…… 「っ!う、動くな!」 外に気を取られていたら、『女』が動いた。長い黒髪は豊か。横座りのように、俺の足辺りに寄り掛かっているにも関わらず、畳に横たわる程の長さだ。 「淳真様」 「動くな。なんだ、お前」 制止したにも関わらず、再び迫ろうと動き始めた『女』に、キツイ視線を送る。そんな視線など気に止めた様子もなく 「月緒だよ。さっき言ったのに」 きょとん、としながらジリジリと近寄り ――――――トンっ 両肩を押された。 「なっ?!………何がしたいんだ……」 完全に『月緒』と名乗った女に押し倒された俺は、上からじーっと見つめているそいつに聞いた。抵抗しようにも、まだあの『香り』の効果が残ってい……る、と思った矢先に、月緒から漂い始めた。 「淳真様に口付けしてたのに」 「ちか…よるな……」 ……と、言うか、今『口付け』って言ったか?空気の出入りのない、人工呼吸みたいな、アレが口付け? 「あのね、月緒は淳真様のお嫁さんで、今からその約束するの」 ふいに軽くなったと思ったら、立ち上がった月緒が、 「おまっ……なに……」 「? 着物脱がないと、出来ないよ?」
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