━━━第二夜

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掻いていた箇所から、ぬるりとした感触が伝わり、指先を見とそこには真っ赤な血が付いている。 「………血?」 掻きすぎたかと思ったが、それにしては量が多い気がして、掌で押さえた。 「まだ触っちゃダメ。私、下手だから……」 四つん這いにゆっくり近づく月緒から目を離さずに……掌を、見た。 「……これ…何だ………」 掌いっぱいに、赤い赤い雫。 いつこんなところを怪我した? 「淳真様の………」 震える掌に、 「綺麗……真っ赤と真っ白」 ――――ぴちゃり… 赤く小さな舌がのびて、赤い雫を舐め取った。 猫が、掌の餌を食べるように。 「なに、なめて……」 俺の震えて掠れ気味な声に、ゆっくり顔をあげる。上気した顔は、幼さを残す美しい造り。バサバサと音がしそうな睫毛。 大きな瞳。 正直……見とれていた。 「こっちも」 「んっ?!!」 油断していたその瞬間、突然舌が口に入ってきた。それはキス、なんてものではなく鉄の味を楽しむただの舐める行為のものだ。ペロペロと嘗め尽くすかのように動き回り、ゆっくりと離れる。 「おいし………」 「っ……」 右腕には鎖。 左掌には血を受けて。 上には、初めて会う女。 「月緒………」 「なぁに?」 「………どけ」 「っ………」 低くなった声にビクリとした月緒が、慌ててどいた。不安げに上目使いで見上げる月緒の後ろには、ざわざわと揺れる桜たち。 「お前は、なんだ?」 「月緒だよ。淳真様のお嫁さん」 「だから、何でだ?」 掌に付いた血を、布団で拭った。シミは気になるが、また舐められるのは嬉しくない。 「お母様がね、ずーっと教えてくれてたの。『十六歳になったら、淳真様に会えるの、お嫁さんになるのよ』って。ずっとずっと、楽しみにしていたの」 「……はっ!会える?拉致して変な匂いで酔わされて……犯される寸前のこの関係が楽しみだったのか?」 「犯……される?なんで、嫌?お母様、淳真様は気持ちいいから大丈夫って」 「意味がわからない!!」
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