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泣いて縋り付くように足に絡むこの『イトコ』を何故か無下に出来ず、条件付きで話しをすることにした。
自分の手もまだ震えていたから。
ひっく……としゃくりあげる。
布団に半ば強引に戻された俺は、上半身を起こして座っている状態で、腰には月緒の腕ががっちりと回ってる。ため息混じりに外を見れば、月が沈む方向へ大分動いたのか……よく見える位置へと来ている。
間違いなく、深夜だろう。
腕にはもちろん、部屋にすら時計は存在していないから、勘に頼らざるをえないけれど。
「………で、お前は」
「………ふぇ…ん…」
はぁ……。
条件付きで……やたらと触らない、やたらと匂いを出さない約束で話しをしてやると決まってからどれだけ時間が経っただろう。首の血は固まり、口の中も落ち着いた。何故か今置かれている意味のわからない状態にも慣れ始めていた。
「いい加減、何か話せ」
月緒の頭をポンと撫でると
「ぎゅって、ぎゅってして、いい?」
ぐすんっと鼻をすすりながら、そんな言葉が返って来た。少し赤い頬を、直視できないまま、俺は頷いた。
「もう、なんでもいいから……」
ため息をつくと幸せが逃げる、なんて言うけれど、それが事実だったら今日一日で俺の未来は真っ暗になるだろう。なんて考えている間に、細い腕が首に回され、仕方なく膝の上に座るように抱き上げた。
「……ここ、ごめんなさい」
「っ!触るな」
かさぶたになった、と思われるそこに指が触れて痛みを生み出す。
「……淳真様は、このお屋敷の一番偉い人。誰に何をしてもいいんだよ?でも、お嫁さんは、私だけなの」
「勝手に決めるな……って、何をしてもいいって、何だ?」
右腕を少し動かす。何も感じないから忘れてしまいそうだが、鎖は、ある。
「? 私とすることとかだよ」
不意に体を離して俺の顔を見つめたその表情は、本当に当たり前事を聞かないで、と言うような不思議そうな顔だ。
……ちゅ。
「………図々しい」
「わっ」
突然奪われた唇に、とすん、と月緒を布団の上に転がした。高級羽毛布団だろう。怪我も痛みもないだろうし。
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