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「こんな屋敷に留まらない。『お前達』は何なんだ?」
仰向けだった月緒は、ごろんと寝返りをうち、俺側を向く。薄い着物に、長い髪、美しい造りの顔に、しなやかな体つき。舞い込む桜の花びらが髪を飾り布団も飾る。
雪女とか鬼女(きじょ)だとか……美しい魔物のようだと思った。
「………淳真様は、特別なの」
ついっと俺の右の人差し指に手を伸ばして、ひんやりとした指が触れた。俺も日焼けしないタイプだから白いが、月緒はもっと白く見える。
月明かりのせいだろうか?
「私、よくわからないけど、淳真様は特別ってわかったよ?」
ちゅく……
「勝手に、触らない約束だろ?」
人差し指に舌が絡められ、批難すると同時に、昼間の感覚が甦った。
たぶん、みさをだ。
「お母様も、淳真様綺麗って……おいしいって」
「つっ…!!」
指先のあの感覚は『飲まれた』時のものだったのか。
「私達は、淳真様がいないと生きれないの」
ちゅるっと透明な中に赤い雫を含んだ糸を引きながら、月緒は言う。普段、日常、精神状態も落ち着いていたならば、かなり扇情的に映るだろう。
だが!今、俺には、そんな余裕はない!
「なら何故今お前達は生きている?二十年間、お前にも誰にも……血を与えた覚えはない」
「みんな、みんなで飲みあってた。私は、淳真様見るまで、喉、渇かなかったんだもん」
手を握り、頬を擦り寄せる。
「………」
非現実的な現状。
だが、これは間違いなく、現実。
みさをが母さんの妹ならば、俺にも流れているのだろう。
この、血を好む者達と、同じ血が。
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