━━━第二夜

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「………ここに、いるつもりはない。この鎖を、早く外せ」 恍惚な表情で、嘗める月緒に言う。気付けば掛け布団には、血と唾液が滴り鮮やかな模様が浮かび上がっていた。 「……だめ」 「ふざけるな」 「ふざけてないよっ」 「……いい加減にしろ」 「淳真様が『言えば』いいだけ」 進展のないやり取り。 そう思った瞬間に、首に腕を回しながら飛び付いて来た。予測していない状況に、何度めかの押し倒された状況だ。 「……っ!」 ぬるり……と渇いた首筋に生暖かい舌が動いた。 ちゅ……と、耳元で吸い付く音がする。 「あつ……ま、さま。私……月緒はなんでも、するよ?だってそれが……」 「しなくていいし、されたくない」 「どうして!?淳真様、嫌?」 「嫌」 間髪入れずに即答して、きょとんとした月緒を押しのける。着物の袖で適当に首を拭って、指先も拭う。白い着物は、俺の血を吸い所々赤く染まる。指先や顔が冷たい気がするのは……貧血からだろうか? 『大切な言葉』を言えばなにかが変わるのはわかった。 言わなければなんとかなるような気もする。 言ったら最後。      きっと、そうだ。 でも、だとしたら何故そんな言葉を母さんは俺に遺したんだ?本当は、言ってしまった方がいいのかも?そんな自問自答から逃れるように、月緒のいない方へ体を向けて布団に入って丸くなった。 疲れた。 本当に。 ……月曜日は午前中から講義がある。 頭の片隅で、自分で決めたルールに従う自分がいて笑えて来た。右腕の鎖がある限り、どうにもならないだろう。 「……淳真様。わかりました………」 音のない部屋に、しゅんと音が聞こえそうな程小さな声がした。キシリ、と畳が軋む。 「………私、初めて見た、初めて触った男の人が、淳真様でうれしい」 意味のわからない感想を述べた月緒は、ポン、と布団の上から肩を撫でる。……内心『犯されないか』と焦ったりもしているけど。 自分の意志があれば、そんな行為をするのに躊躇なんかない。ただそこに『求められるだけ』の関係しかないなら無理だ。 そして月緒は何度か繰り返した後、腕を離して…… 「…………なんでお前が入ってくる」
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