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突然、インターフォンが鳴り響き、世界が変わった、二十歳の春。
それまで守り続けて来た、俺のルールが崩された、二十歳の春。
マンションの前が、騒がしい気がする。……けど、俺には関係ないだろう。そう思って軽い朝食、と言ってもご飯に味噌汁、昨夜の残りという和風でシンプルな食事を摂っている時だった。
―――――――ピンポー……ン……
インターフォンが鳴り響いたのは。
日曜の朝早くに、何の連絡もなしに誰か来るとは思えない。そうしても相手にしなかったことが多々あるので、知っている奴らならやらないだろうし。
「……もう一回鳴るのを待ってみるか」
と、リビングの折りたたみ式の白いテーブルとチェアにつく。二年近く住んでいれば嫌でも慣れるのだけど、一人暮らしのこの部屋はきっと二人ではせまいけど一人では広い。テーブルの位置から部屋まで、ドアを開けていると全部見えてしまって……十畳という広さが際立っていた。
―――――――ピンポー……ン……
「……………」
そんなことを考えていたら、もう一度鳴り響いた。
「……はい」
すぐ近くの壁にかかっているインターフォンに腕を伸ばして受話器をはずす。ディスプレイは見ていなかった。
『朝早く、申し訳ありません』
受話器を通して聞こえてきたのは女性の声。知らない声、と言いたいけど聞き覚えのあるようなないような。懐かしさを感じる声のような気がする。
そう思ってディスプレイをちらりと見た俺は絶句した。
「―――――母さん…………」
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