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それにしても、この女。
「やたらと、触るな」
「ふふ……綺麗な肌なんですもの。女性よりも。うらやましくなってしまいますわ」
つつ……っと指先で頬を掠めてまた元の位置に戻って行った。やけに「甘い香り」が残っているけど……初めて会った時には、こんな香りを付けているとは気づかなかった。
そして、窓を指差し
「私たちが向かっておりますのは、あちらの屋敷です。淳真様の、お屋敷」
指差された場所に視線を巡らせると、薄い桃色が埋め尽くしていた。
――――――――――くらり………
突然世界が、ゆっくりと、揺れた。
ゆらゆら ゆらゆら
水の中のような、心地よさ……
「大丈夫、ですわ……身をゆだねて……ゆっくり、ゆっくり……」
「……っ、は……っ」
呼びかけられた声に、自分の熱い息だけが吐き出され、返事は出来なかった。
寝てた……のか?
いつから?
うっすら開き始めた瞼と、横になっている感覚で、寝ていた、と理解する。頭の下の柔らかいモノは……?
「まだ横になっていて大丈夫ですわ、淳真様」
「……ん…」
妙な怠さが体を支配していて、起き上がるなんて考えられない。
――――甘い、重い、匂い
ずしり、と重くのしかかるこの香り。
誰から……みさをから?
全身を頭の下の……みさをの腿に預けて、任せた。その選択しか出来ないほどの倦怠感が体を支配しているから。そんな俺の、髪を撫で、髪を梳くみさをは。
「綺麗な髪、綺麗な顔。男性にしては細い首、肩」
言葉に合わせて、つつっ……と指先を辿らせた。
行き着く先は、頸動脈。ドクドクと脈打つそこを、行ったり来たりと何度も辿って、肩、腕、そして
「手首、焼けない肌。…………が透けて美しいですわ。ふふふ……」
『何』が、透けてると今言った?
疑問に思った時には指を取られた気がした。
右の、人差し指。
「月緒(ツキオ)が羨ましいですわ、こんなに美しい、旦那様」
ぬるり……。
生暖かいものが、人差し指を辿る。同時に、右手首に開放感が。
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