僕は正直者

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僕は正直者だ。 誰よりも真実を愛し、どんなものも本質を大切にする。  本当の僕は。 もうひとりの僕は誰よりも嘘つきだ。 屁理屈が大好きで、僕とは真逆のことしか言えない。 これはきっと呪いなんだ。 どんなものにも勝る恐ろしい呪いなんだ。 どっちが本当の僕なのだろう。 今日は嘘つきの僕は暴れなかった。 学校の帰り道 夕焼けで伸びた影に目を落としながら今日の一日を振り返った。 良かった と安心し、家への帰路を歩いた。 いい加減コイツがいつ暴れるのかと怖がるのは止めにしたいが、それは正直な僕にとっては酷なものだ。 とぼとぼとコンクリートに足を置くように気だるく歩いた。 心の中に空間ができたように訳のわからない物足りなさを感じたからだ。 なんだろう。満たされない何かを察し、それは何かと探ると五里霧中で余計分からなくなる。 右肩にかけたスクールバックを落とさないように上げると目の前がぐらついた。 驚きと共に背中に衝撃が来た。 体をふらつかせながらも転ばないように耐え後ろを振り返った。 またお前か、実和(みわ)。何回言ったらわかる。人の背中に飛び付くな。 幼なじみならいい加減憶えろ。 ん?何ニヤニヤしてんだ?気持ち悪いぞ。 わっ!叩くな叩くな!! 笑ってたのは本当だろ!?痛っ! 分かったから!俺の見間違いだから!もうやめろ!このおてんばがっ!! あー痛。えっなんで俺がお前に奢んなきゃいけねーんだよ。 あっ、おい。なに怒ってんだよ。機嫌直せ。 あーもうっ!ガリガリ君でいいな!? はっ?パピコがいい?贅沢言うな。 あー!帰るな! 分かったよ!ったく。 やんなるなー。 オメーのそーいうとこ嫌いだわ〰️。 ほらまた嘘つきのあいつが暴れた。 また酷いことを言ってしまった。 でも実和からもらったパピコの半分が僕の何かを満たしたのはきっと呪いの副作用だろう。
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