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#6京北ガール
土日の部活は午前だけ
午後の自由な一時を想像すると…たまりません!
練習終わりの帰り道を午後の至福を連想しながら歩く
「みーこ」
隣で歩く理穂が口を開いた
「んー?」
「にやにやしてる」
はっとなって口元を掌で覆う
もう遅いか
「みーこはホントに…もう…ホントに…うくく」
クスクス笑う理穂
何だよ…ホントにの何だよ…早く言いなさいよ
「なにさ」
「いや~、隠せないタイプというか、自由で純粋だよね、ホント」
「それ誉めてる?」
「誉めてる、誉めてる!大絶賛だよ!」
いや、馬鹿にしてない?
まあ、いいけどさ
楽しそうにしてるし
ジリジリ日照りが続く中を
女子高生二人が歩く
空を見上げると青空に雲が浮かんでいる
まるで龍が潜んでいそうなくらい大きい
暑い1日を連想させる雲
夏の雲だ
京北は田舎で特に目立った物もなく、こういった景色が目につく
その季節特有の景色や生き物等の風物詩が私は昔からたまらなく好きだ
季節を染々と実感するのが何とも言えない喜びというか、思いふけったりとか、時折切なさもあって……すみません、何言ってるか分かりませんよね…
ダメだ…私はすでに京北に染まっているらしい
独りでに頭を左右に振る
「どうしたの?」
理穂が不思議そうに私を見てきた
そりゃ、そうだ
「何でもない」
今日は失態が多いなぁ
「ところでさぁ。今日の私、どうだった?」
どうって…
「何が?」
「練習の話。形にはなってきてるかなぁ」
ああー、それね
「上達してるよ。ものすごいスピードで」
「そっか」と嬉しそうにする彼女
「ちょっと掌見せて」
「掌?」
私は理穂の手をとって、掌を見た
固いマメがしっかりとできている
家でも学校でも欠かさず素振りをしているんだろう
なんて強靭なヤツなんだ
ここまで、自分で自分を追い込めるのはすごいと感心する
「何でここまでして…」
それを聞いてニコッと笑顔になった
「だって、楽しいもん」
どうやら漢字を間違えたみたいだ
強靭じゃなくて、狂人ですね…どうも
「すごいなぁ、りほっちは」
「そうかなぁ」
と頭をかいて照れている
普通じゃないって意味の「すごい」なんだけどなぁ……
「一体、何目指してんの?」
「みーこ!」
即答されたが…それはダメだ
私に並んでどうする
もっと高く飛べ!
私の屍を越えていけ!
「ダメダメ。目標はもっと高くなくちゃ」
え~、と苦笑い
「それじゃあ…剣道でてっぺんとる」
「……」
どっかのヤンキー漫画かな
なんにしても主人公らしい台詞だ
「それでいいと思う」
理穂なら本当にやりかねないからね
先ほどから道路をずっと歩いているけど、横切る車がない
田舎はこうも静かなんだね
人も少ないし
寂しさを通り越して
ちょっとした薄気味悪ささえ感じる
マネキンでも置いたらどうかな
……いや、もっと気味悪くなるか
理穂は道路に引かれた白い区画線の上をはみ出さないように楽しそうに歩いている
こういう無邪気な所も人気の一つなのだろう
「ねぇねぇ、最近どんなゲームしてるの?」
不意にきいてきた
「りほっちにはわからないゲームだと思うよ」
理穂はゲームとかしなさそうだしね。やるとしてもスマホのパズルゲームの類いだろうし
「そんな事ないって。教えてよ、ね?」
と小首を傾げる
こういう仕草に男子はハートを撃ち抜かれるんでしょうね
私も練習した方がいいのかな…
「最近なら、狩りゲーの爬虫類ハンターとか、無双ゲームの真ファントム無双とか、かな」
「それ私どっちも好きだよ!」
「えっ、りほっちゲームするの?」
「やるやる、大好きだよ」
へー、意外!
人は見かけによらないって事か
そこからは、ゲームの話で大盛り上がり(一方的に私が)
どんな装備を使用してるのか
進捗状況は
レア武器の取得状況
好きなゲームキャラクター
などなど、ハマっているゲームの話なら話題が尽きない
「りほっちもゲーマーだったとはね~」
「当たり前だよ、私はやり出したら極めるまでやり込むからね!」
フンスと鼻を鳴らす
さすがは主人公
途中下車はせず、頂点を極める
私もやり込むタイプだから彼女とは良きライバルになれそうだ
「みーこの家はネット環境あるの?」
「あるよ」
おっと、このパターンは
「じゃあさ、今夜一狩り行こうよ」
キタ、キタ、キタ!そう来なくては!
「いいよ!夜はフリーだし、やる時はスマホで連絡して」
「オッケ~」と顔の横でオッケーサインをつくる
いちいち可愛い
今度、私もそれをやってみるか
いやー、しかし
勉強にスポーツにゲームか……
何でもできるとは思ってたけど
ホントに何でもやるんだね…
恐れ入ったよ
今日の夜は共に狩りゲー
非常に楽しみだ
外の暑さを忘れる程に心が踊った
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