第二章「美少女降臨」

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「何?アンタも私に文句あんの?」 バチッと目があった途端、俺にも喧嘩腰。手を伸ばせば引っ掻かれそうなこの感じは人嫌いの猫っぽい。 「文句あるなら、かかってくれば?男でも相手になるけど」 そう言いながら睨みを効かせる目の前の女子は、猫なんかじゃなかった。手負いの熊だ。 「いや…俺は君が苛められてると思ったから、助けようとしただけなんだけど」 歯切れ悪く呟く俺に彼女が返して来たのは、 「余計なお世話なんですけど」 なんて失礼過ぎる言葉と嘲笑だった。 ていうか、何この子!今時不良でもこんなガラ悪くないでしょ! 「あー、まぁそうだったみたいだね。何ともないならそれで良いよ」 心の中の俺は「なんだテメェ、人が折角助けてやろうとしたのにお礼の一つも言えないのか!可愛くない女だ!」と言ってる。 けど、実際こんな危なそうな子の前でそんなこと言える筈もない。 ドSキャラ試すのにちょうど良いシチュエーションかもなんて思ったけど、この子はダメだと瞬時に分かった。だって、この子自身がドS超越してそうな感じなのに、にわかドSの俺が太刀打ちできるわけないじゃん。 ねぇ達に小さい頃から虐げられている俺は、何気に空気を読むのが得意だ。そんな俺の勘が「こいつはヤバイ」と警鐘を鳴らしている。 「えーと、何かごめんね。じゃあ、俺はこれで」 愛想笑いを顔に貼り付けて、そそくさとその場を後にする。途中でチラッと振り向くと、彼女は俺と違う方向に歩き出していた。 …何か変だ。 彼女の歩き方が、何となくおかしい。しっかり振り返ってみてみると、やっぱり片方の左足を若干引きずるようにして歩いている。 やっぱりさっき、先輩達に何かされたんだろうか。俺が見てた時は暴力っぽいことはされてなかった気がするから、されたんだとしたら俺が来る前? 「……」 多分、俺が駆け寄っても彼女は喜ばない。「余計なお世話」やら「関係ない」やら言われるに違いない。けど、気付いたのにこのまま見て見ぬフリするのもスッキリしない。 俺はクルリと方向転換すると、まだそう遠くへは行っていない彼女の元へと駆け寄った。 「ねぇっ、ちょっと待ってよ!」 軽く肩に手を触れると、振り返ると同時に思いっきり睨まれる。 それに若干怯みつつも「もしかして怪我してる?」と口にした。彼女は少しだけ驚いて、そのまま黙り込む。 「あれ?違う?もしかして元々足が悪いとかそういう感じならごめん!いや、それならそれで肩貸すし、怪我してるなら保健室行く?」 罵倒される気満々だった俺は、黙られて逆に焦る。いや、罵倒される気満々ってなんだよ。
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