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「何?アンタも私に文句あんの?」
バチッと目があった途端、俺にも喧嘩腰。手を伸ばせば引っ掻かれそうなこの感じは人嫌いの猫っぽい。
「文句あるなら、かかってくれば?男でも相手になるけど」
そう言いながら睨みを効かせる目の前の女子は、猫なんかじゃなかった。手負いの熊だ。
「いや…俺は君が苛められてると思ったから、助けようとしただけなんだけど」
歯切れ悪く呟く俺に彼女が返して来たのは、
「余計なお世話なんですけど」
なんて失礼過ぎる言葉と嘲笑だった。
ていうか、何この子!今時不良でもこんなガラ悪くないでしょ!
「あー、まぁそうだったみたいだね。何ともないならそれで良いよ」
心の中の俺は「なんだテメェ、人が折角助けてやろうとしたのにお礼の一つも言えないのか!可愛くない女だ!」と言ってる。
けど、実際こんな危なそうな子の前でそんなこと言える筈もない。
ドSキャラ試すのにちょうど良いシチュエーションかもなんて思ったけど、この子はダメだと瞬時に分かった。だって、この子自身がドS超越してそうな感じなのに、にわかドSの俺が太刀打ちできるわけないじゃん。
ねぇ達に小さい頃から虐げられている俺は、何気に空気を読むのが得意だ。そんな俺の勘が「こいつはヤバイ」と警鐘を鳴らしている。
「えーと、何かごめんね。じゃあ、俺はこれで」
愛想笑いを顔に貼り付けて、そそくさとその場を後にする。途中でチラッと振り向くと、彼女は俺と違う方向に歩き出していた。
…何か変だ。
彼女の歩き方が、何となくおかしい。しっかり振り返ってみてみると、やっぱり片方の左足を若干引きずるようにして歩いている。
やっぱりさっき、先輩達に何かされたんだろうか。俺が見てた時は暴力っぽいことはされてなかった気がするから、されたんだとしたら俺が来る前?
「……」
多分、俺が駆け寄っても彼女は喜ばない。「余計なお世話」やら「関係ない」やら言われるに違いない。けど、気付いたのにこのまま見て見ぬフリするのもスッキリしない。
俺はクルリと方向転換すると、まだそう遠くへは行っていない彼女の元へと駆け寄った。
「ねぇっ、ちょっと待ってよ!」
軽く肩に手を触れると、振り返ると同時に思いっきり睨まれる。
それに若干怯みつつも「もしかして怪我してる?」と口にした。彼女は少しだけ驚いて、そのまま黙り込む。
「あれ?違う?もしかして元々足が悪いとかそういう感じならごめん!いや、それならそれで肩貸すし、怪我してるなら保健室行く?」
罵倒される気満々だった俺は、黙られて逆に焦る。いや、罵倒される気満々ってなんだよ。
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