第三章「奇妙な関係」

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「ちょっと…何よ、その顔は」 「いや…相川さん。お礼言いたかったんだなぁって。分かり辛過ぎて」 「…バカにしてんの?」 だって、誰だって「早乙女君変人だね」=「この前はありがとう」だって思わないでしょ! 「ご、ごめんごめん。バカにしてるとかじゃないって」 「だったら何なのよ」 「何か可愛いなぁって」 「…可愛い?」 「うん、可愛い」 相川さんの目を見ながら、サラッと言う。だって可愛いじゃん。所謂ツンデレって奴でしょ? 「…やっぱバカにしてんだろ」 え、何!?更に怒ってる!? 「良い加減にしろよ、早乙女ぇ」 「え、えぇ!?何で怒ってんの!?」 これもツンデレ!?今にも焼き殺されそうなんですけど!?!? 相川さんの反応全てが理解できない俺。照れてるのかと思ったら、急に怒り出した。訳が分からくて焦ってる俺を置いて、相川さんは勢い良く歩き出す。ドスドス、そんな効果音がピッタリの歩き方。 「あ、ち、ちょっと待ってよ!てか、そんな歩き方したら…」 案の定、足が痛かったようで。十歩程ドスドス歩いてそれからすぐまたゆっくり歩きになった。ほら、あんな歩き方するから。 「足痛い癖に、そんなドスドス歩いちゃダメじゃん」 「…るさい、分かってる」 ゆっくり歩きに戻った相川さんは、バツが悪そうに顔を背ける。そんな相川さんを見てると、自然と笑みが溢れた。 「やっぱ、可愛いよ。相川さん」 「まだ言うか…!」 「相川さんのことちゃんと知れば、引くヤツなんか居なくなると思うけどなぁ」 「…どうすれば良い?」 「え?」 「どうすれば、私変われる…?」 そう言う相川さんは、多分だけど初めて真っ直ぐ俺の目を見た。クリクリの大きな瞳で、立ち止まってジッと俺を見つめる。 「…相川さん」 「早乙女君、変人でしょ?」 …俺、ドSキャラを目指すつもりがいつの間にか変人キャラを習得してしまったのか?そう錯覚してしまう程、相川さんは俺を変人扱いする。 「…変人なら、変人にも付き合えるでしょ?」 「え?」 「相川君なら、分かるかと思って。どうすれば…私が変われるか」 そう口にする相川さんの瞳は、やっぱり真剣だった。言い方は分かりにくいけど、相川さんは変わりたいんだ。今の自分を、変えたいんだ。 …俺と、同じだ。 「…分かるよその気持ち。俺も、一緒だから」 「…」 「見たら分かると思うけど、俺可愛いんだ」 「…は?」 「嫌なんだ、可愛いの。男なのに、誰も男として見てくれない。こうやって言ったって、笑われるだけ。俺は、真剣なのに」 「…」 「なりたい自分になりたい、ただそれだけなのに。誰にも理解されたことないよ」 自嘲気味に笑う俺を見ても、相川さんは笑わなかった。ただジッと、俺を見つめ続ける。
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