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「可愛いの何が悪いの、可愛くないより良いじゃんって。まぁ、そりゃそうなんだけどさ。そうじゃなくて、何ていうか…上手く言えないけど、兎に角俺も今の自分を変えたいってそう思ってる」
瑠衣にも、理人にも、言ったことのない気持ち。いや、もしかしたらあるかもしれないけど、笑いながら流されることしかなかった。だから、自然と誰にも言わなくなった。
側から見たらきっとバカバカしい悩み、けど俺は俺なりに真剣で。
昨日話したばっかりの相川さんに何でこんな話をしてるのか良く分からないけど、彼女はきっと笑わないだろうと思った。俺と彼女は同じだ。今の自分から脱却したくて、悩んでる。
「でさ、相川さん。提案なんだけど、俺達協力し合わない?」
俺がそう言うと、相川さんの瞳が少しだけ見開かれる。
「本当は今日、俺から会いに行こうと思ってたんだ。お願いがあってさ」
「お願い?」
「そう。俺の一方的なお願いだから、言うの結構迷ったんだけど、俺も相川さんに協力できることがありそうな気がして」
表情を緩めながら彼女を見ても、訳が分からないって顔をしてた。
「俺昨日、相川さんのお兄さん見てビビッと来ちゃったんだよね!帝様だ!って」
「昨日も言ってたけど、その“帝様”って何よ」
「昨日俺が読んだ少女漫画に出てくる帝様!イケメンでドSで、女子からも男子からも一目置かれるすっごいキャラでさ!」
熱く語る俺とは対照的に、相川さんの表情は冷ややか。
「少女漫画…」
「あ、いや、趣味とかじゃなくて!可愛い俺を脱却する為の参考として姉ちゃんの借りて読んだだけ!」
「益々意味分かんないんだけど」
「ま、まぁそれは今は置いといて。兎に角、相川さんのお兄さん、めちゃくちゃ俺の理想なんだよね!チラッと見ただけだけど、あの雰囲気とか本当カッコよかったじゃん!」
「ただ無愛想なだけじゃん」
「それがサマになってるのが良いんだって!」
ていうか、無愛想なのは君も同じだよ。とは、思っても言わない。
「だから、俺があんな風になれるように協力して欲しいんだ!」
「…は?」
「相川さんなら、俺の気持ち分かってくれるでしょ?俺は相川さんのお兄さんみたいにイケメンじゃないけど、雰囲気とか仕草だけでも側で見て勉強させてもらいたいんだ」
「あんなの見て、勉強?無口で何考えてるか分かんない変わり者だけど」
「変わり者かどうかは分かんないけど俺、そんな風になりたいの!」
「…アンタ、一体どこ目指してんの」
呆れ顔の相川さん。
「俺も、相川さんさえ良ければ協力する!こう見えて、女子間の空気の読み方とか流行とか、そういうのに詳しいから」
「いかにもそう見えるけど」
「…ま、まぁ、ねぇ達三人も居るから女子向け雑誌とか服とかも山ほどあるし、俺が言うのも何だけど見てくれだけは良いから、色々参考にもなると思うよ」
本性は、あの時の相川さんと似たような感じだけどね。とは思っても言わない。
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