第四章「いざ脱却の為に」

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ーー 「いやぁ、だからさ。そもそも漫画を人生のバイブルにしようなんて考えがバカだよね。あ、でもあの漫画はマジで面白いから!渥美ねぇに許可取って今度貸すよ」 相川さんと一緒に帰ったあの日の次の週、水曜の放課後。「イメージ改革推進会」の会議日。 「イメージ改革推進会」っていうのは、俺が命名した。勿論、相川さんにも伝えました、無言で凍てつく視線を頂きました。以上。 俺は「可愛い」脱却の為、相川さんは「毒舌」脱却の為、秘密の協力関係を結んでから数日後。 放課後学校から結構遠く離れたファミレスで待ち合わせ。出発地点は一緒で目的地も一緒、けど異動は別々だ。 なんせ秘密の協定、お互いバレることは避けたい。相川さんは「自分の家に来れば良い」って言ってくれたけど、家の人が居ないと聞いて丁重にお断りした。 付き合ってない女子と部屋で二人きりなんて、そんな不純なことできる訳がないでしょう! 「こんな面倒なことしなくたって、ウチに来れば良いのに」 アイスカフェラテのグラスをストローで回しながら、そう口にする相川さん。彼女の手の動きに合わせて、グラスがカラカラと小気味良い音を立ててる。 「ご家族が居ない時はダメです!てか俺は帝様と会うその日までに質問を纏めないといけないんだから、相川さんも相談乗ってよ」 俺はカルピスの巨峰味。この味があるファミレス、最高。 一気に飲み干して空になった俺のグラスを、相川さんがテーブルに肩肘を突きながら眺めてる。 「早乙女君て、飲み物のチョイスも可愛いね」 「…放っといて。また取ってくるね」 二回目のお代わりを取って席に着くと、さっき頼んだフライドポテトが運ばれていた。 「お待たせー。あ、相川さんもグラス空いてる。俺取ってくるよ、またアイスカフェラテで良いの?」 「うん」 「了解ー」 相川さんの分もお代わりを汲んでくる俺。 「はーい、お待たせ」 相川さんの前にカフェラテのグラスを置くと、また氷がカランと音を立てた。 「相川君って、フットワーク軽いよね」 「え、そう?」 「生粋のパシリ体質、もしくはドM」 涼しい顔してそんなこと口にする相川さんに、俺は思わずむせた。 「グボッ、ガッ、ゴッ」 「ちょっと…大丈夫?」 「ゴホッ…昔からねぇ達にパシラレまくってるから、それが染み付いてんのかも」 物凄い不本意だけど、そうしないと俺の人権ないからね。あの家で。 「けど、ドMは違うから!俺が目指してんのはMじゃなくてS、ドが付くSなの!傍若無人で自分勝手な俺様男子なの!」 「…早乙女君、そんなクズ目指してんの」
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