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「相川さんのお兄さん、俺のなりたい雰囲気にピッタリで…」
興奮気味に言いかけて、気付く。
「あ、いや…別に相川さんのお兄さんが傍若無人で自分勝手な俺様男子っぽいってことじゃなくてね!?」
「でもそれ目指してるんでしょ?」
「まぁ、それに近い感じを目標にはしてるけど…」
「で、ウチの兄ちゃんは早乙女君の理想にハマってるんでしょ?」
「それはもう、どハマりしてますとも」
「ならやっぱ、ウチの兄ちゃんが傍若無人で自分勝手な俺様男子って言ってるようなもんじゃん」
「え!いや、あの…そうなんだけど…あ、そうじゃなくて…」
相川さんのお兄さんを侮辱する気はこれっぽっちもない。一目見た瞬間から、その雰囲気は俺の理想そのもので。
そして俺が目指してるのが帝様、帝様は傍若無人で自分勝手な俺様男子。ということはつまり、俺は意図せずとも相川さんのお兄さんをディスっているということに!?
いや、俺がもし誰かから「この傍若無人で自分勝手な俺様男子め!」と言われたら、それは最高の褒め言葉。けど、相川さんからしてみれば自分の兄ちゃんを傍若無人呼ばわりされて良い気はしないはず。
いやでも、本当にバカにするとかそんな気は……
「…ブッ」
一人自問自答しながら焦っていると、向かいから笑い声が聞こえてきた。
「冗談だってば。早乙女君、焦り過ぎ」
「じ、冗談…?」
「あー、おもしろ。早乙女君って本当、全部顔に出るよね」
相川さんに失礼なことを言ってしまったと焦っている俺を見ながら、相川さんは愉快そうに笑う。
「…笑ってる」
「ごめんごめん」
「可愛い」
「…は?」
「うん。やっぱ小花って名前、相川さんにぴったりだ」
そう言って笑う俺に飛んできたのは、相川さんの渾身のチョップだった。
「痛っ!え、な、何!?」
涙目で頭を抑える俺と、プイッとそっぽを向く相川さん。
「…変なこと言うな、早乙女」
「俺なんか言った!?」
「可愛いとか言うな。可愛いわけないでしょ、私が」
「え、何で?」
相川さんは、間違いなく可愛い。理人も瑠衣も、相川さんは学年で一番って言っても大袈裟じゃないくらいの美少女だ、って言ってたし。
「見た目が可愛いのは分かってんの」
「あぁ…そうですか…」
「…中身が、伴わない」
相川さんは、笑顔をフッと真顔に切り替える。
「相川さんは可愛く変わりたいってこと?」
「まぁ、ね」
「十分可愛いじゃん」
そう口にすれば、再びチョップを食らった。
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