第四章「いざ脱却の為に」

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「俺、自分から申し出たは良いけど相川さんの役に立てるかなぁ」 見た目パーフェクトなんだから、後は言動に気をつけるだけで全てがパーフェクトになる気がするけど。 「ていうか、相川さんって何でそんな毒舌なの?」 「理由分かったら苦労しないんですけど」 「あの先輩達は別として、友達とか彼氏とかにもそうなの?」 うわ、このフライドポテト上手すぎ。俺の好きな太めのホクホクタイプだ。 「…居ない」 「え?あ、アチっ」 太めのホクホクタイプは、上手いけど口内への攻撃が凄まじい。俺はグラスに残ってたカルピスを一気飲みして口内を救済した。 「だから、居ないってば」 「相川さん今彼氏居ないの?めちゃくちゃモテそうなのに」 「居たことない」 「え?彼氏居たことないの?」 「悪い?」 「全然。俺も彼女居たことないもん」 「…ふーん」 「じゃあ、彼氏ってのは置いといて友達にも毒舌?」 「それも、居ない」 「…え?」 「だーかーらー、友達居ないって言ってんの!彼氏とかそれ以前に、まず友達って呼べる存在が居ないんだよ!小学校の時はそれなりに居た気がするけど、中学に上がってからは居ないの!高校でもできないの!クラスでも浮いてて、お昼も一人なの!登下校も、休みも、一人なの!いっつも一人なの!」 「ご、ごごめん!分かった、分かったからちょっと待って!落ち着いて!」 いつ息継ぎしてるのか聞きたいくらい、一気に喋る相川さん。落ち着かせるために、さり気なく横に置かれたアイスカフェラテを手元に差し出した。 俺の手からそれをひったくると、ストローは無視して直に一気飲み。ドンッと勢い良く、テーブルにグラスを置いた。 「あ、な、な、無くなったね!取ってくるよ!何が良い!?」 「コーラ!」 「はい、コーラですね!了解しました!!」 ザッと立ってサッと行ってガッとコーラ取って来ました!はい、どうぞ! 「…ありがと」 グラスの中でシュワシュワしてるコーラの泡粒を、ジッと見つめる相川さん。 「良いから、グッといっちゃって!一思いに!」 俺の言葉に、相川さんはガッとグラスを握ってまたストロー使わずに一気飲み。ゴクゴクと、何とも良い音が響いて、あっという間にグラスは空っぽ。 …凄い。炭酸ってあんな風に飲めるんだ。 感心していると、相川さんはちょっと苦しそうに下を向いた。流石に、炭酸の一気はキツかったらしい。 「ごめん、俺が勧めたから。大丈夫?」 「大丈夫。なんか色々スッキリしたわ」 炭酸の一気飲みでスッキリするJK、男前過ぎる。 「私、いっつもこうなんだよね」 「え?」 「焦ったり、緊張したり、恥ずかしかったりするとさ。すぐ口悪くなって、ダメって分かってても止めらんない」 「…」 「周りを不快にさせるのも、分かってる。高校になったら流石に変わらなきゃって思っても、上手くいかない。女子達から何かと絡まれて、言わなきゃ良いことまで言っちゃって、更に嫌われて。だから、友達も居ない」 自嘲気味に笑う彼女だけど、その心はきっと傷だらけ。言葉で人を傷つけてきたであろう彼女だけど、きっと彼女自身も、同じだけ傷付いてきたんだ。 根っからの悪者じゃない、だからこそ彼女は悩んでるんだ。目の前の相川さんを見ていると、俺は何とかして彼女を助けてあげたい気持ちになった。 俺ができることなんて、きっと知れてる。けど、彼女が望むことは何だってやってあげたい。何故か、無性にそんな気持ちに駆られた。
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