第四章「いざ脱却の為に」

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「何で二人でファミレス?こないだまで相川さんが何組かも知らなかったじゃん」 「だから…相川さんが足怪我してるの保健室に連れてって…それで…そう!友達になったんだ!」 そうだ、友達!この表現が一番嘘がない。相川さんからは嫌な顔されそうだけど。 「友達?」 瑠衣の顔は到底納得してるようには見えない。 「そう、友達」 「わざわざ見つかりにくいファミレスで密会する友達って何ですかぁー?」 「理人、煩い!だからそれは、こうやって誤解されるのが嫌だったからで…大体、相川さんが俺のこと好きになるわけないでしょ!?」 「うん、まぁそれは確かに」 「相川さん級の美少女が俺じゃなくて南とか、冷静に考えたらあり得んな」 …その理由で納得されるのも何だかなぁ。 「…でも、こんなこと言いたくないけど相川さんあんまり良い噂聞かないよ?」 瑠衣が、遠慮がちにそう口にした。 「めっちゃ可愛いけど、凄い毒舌で性格悪くて、クラスでも浮いてるって。先輩だろうが男子だろうが平気で暴言吐いたり、暴力振るったりすることもあるって…」 「瑠衣の言う通り、相川さん悪く言われてばっかだよ。実際、女子と言い合いしてる所見たことあるし」 続いて真凛も。 「確かに、相川さん色んな意味で強烈らしいからなー。あんだけ可愛けりゃ、多少性格ひん曲がってても許せそうなもんだけど」 理人の言うことは、無視する。 「南…大丈夫なの?相川さんに、何か弱味とか握られてない?」 「…弱味?」 「もしそうなら、私から言おうか?南優しいからハッキリ言えないんでしょ?」 心配そうに俺を覗き込む瑠衣に、俺の心がチクリと痛む。友達、確かにそれは嘘じゃないけど隠し事をしてることは確かだ。 …まぁ、俺のは他人からすれば死ぬ程どうでもいい隠し事な気がするけど、相川さんのことは流石にペラペラ喋れない。 「ありがと、瑠衣」 瑠衣を真っ直ぐ見つめて、軽く笑う。 「でもホント、そんなんじゃないんだ。ただの友達で、あのファミレスもたまたま。騙されてるとか脅されてるとかもないから、安心して」 「南…でも」 「瑠衣だって、ホントはこんな悪口みたいなこと言いたくないよな。こんな俺を心配してくれる友達なんて、瑠衣くらいだよ」 ニカッと笑えば、瑠衣もぎこちなくだけど笑ってくれた。 「私も、ちょっとは心配してるけど」 「真凛も、ありがと」 君は、半分好奇心隠しきれてませんよ。 「俺だって、大好きな南ちゃん心配よー」 理人、お前は完全に楽しんでる。そしてそれを隠そうとすらしてない。
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