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「南、何か隠してんだろ」
「隠してない」
「今までお前が俺をだし抜けたことってあったっけ?」
「ない」
「なら、お前が俺に嘘つく意味は?」
「…ない」
眉間に皺を寄せて、苦い顔の俺。今何か言っても、どうせ全部見破られるだけ。かと言って俺の一存だけでは、理人に全ては打ち明けられない。
「別に、無理に聞きゃしねぇよ」
寝転がっていた体を起こして、ベッドの上で胡座をかく理人。
「相川さんは兎も角、お前の隠してることなんてどうせ大したことねーだろうし」
…その通りではあるけど、失礼だな。
「大方、可愛いからカッコイイにシフトチェンジでもしようとしてんだろ?」
「え!?」
いきなり正解!?
思いっきり動揺しだす俺と、最初から分かってたって感じの余裕そうな理人。
「最近、いきなりダテメかけてきたりだとか、時々クールぶってみたりだとかしてんだろ?瑠衣が〝南に俺に気安く話しかけんなって言われたんだけど、悩み事かな?″って心配してたぞ」
「…」
「お前そんなに可愛い嫌なんか」
首の後ろに手を当てながら、理人は分からないって顔をする。
「嫌に決まってんだろ」
「褒め言葉じゃん」
「でもヤなの」
「見た目そんな可愛くて、ドSキャラは無理あんだろ」
「いっそ見た目とのギャップで勝負して…って、俺ドS目指してるって言ったっけ?」
「南はほーんと、ツメが甘いなぁ」
ニヤニヤしながら理人がベッドを剥ぐって取り出したのはーー
「あーっ!!な、なな何でそれ!?」
最早参考というか趣味の域で読んでると言っても過言ではない、渥美ねぇから借りたあの漫画の一巻だった。最初に借りてからもう何回も読んでて、渥美ねぇが「もう読んでないから返すのいつでも良い」って言ってくれたのもあって、未だに俺の部屋に置いてあるそれ。
渥美ねぇ以外の家族にもバレたくないから、読む時以外はベッドの下に紙袋ごと隠してる筈なのに、何でそれを理人が持ってんの!?
「お前は昔から、見られたくない大事なものはベッド下の左奥って決まってんだよ」
ニヤニヤ顏の理人は、自分の顔の前で漫画を面白そうにヒラヒラと動かす。
無意識でやってたから、その法則今初めて知った!てか何で自分のそんな癖を理人から聞かなきゃいけないんだ!
「しかし、半分当てずっぽうだったけど。その反応見る限りマジでこの漫画みたいな男目指してるみたいだな」
「…ただ、渥美ねぇから借りただけだし」
そう言いつつも俺はもう、半分諦めモードに突入していた。犯罪暴かれる犯人って、こんな気持ちか?
「もう良いって。んで、参考になったんか?」
パラパラと漫画をめくる理人。俺もベッドに腰掛ける。
「意外と良くできてるよ、面白かった」
「いや感想聞いてねぇし」
「これ読んだ瞬間、俺の目指すところは決まったの」
「リアルでこんなんやってたら、痛いヤツ以外の何者でもねぇだろ」
渥美ねぇにも言われたよ、それ。
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