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我ながら、何て強引で頭のおかしい提案。もし俺が逆の立場で男子にそう迫られたら、絶対オッケーしないだろう。
冷静に考えると分かるんだけど、俺はどうしても言わずにはいられなかった。断られても、それはそれでしょうがない。言わないでいるよりずっとマシだ。
「…良いよ」
暫しの沈黙の後、相川さんが呟く。
「…え、良いの!?」
「別に、良いよ」
「何で!?何で良いの!?」
「…は?」
「だ、だって、俺の言ってること全部嘘で、ただ相川さんに近付きたいからってそれだけかもしんないよ!?」
「そうなの?」
「いや、違うけど」
こんな簡単に男を信じちゃう相川さんに不安を感じる俺。必死に説得を試みる。
「相川さんって、以外と騙されやすいタイプ!?そんな美少女なのに、騙されやすいってヤバいよ!将来悪どいホストとかに引っかかって悲惨な人生送ることになっちゃう!考え直して!」
「…アンタ、一体何なの」
そんな呆れた顔したって無駄だ!俺は相川さんの行く末が頗る心配だ!
「意味分かんない。断って欲しいの?」
「それは困る!困るけど、今はそんな話はしてない!」
「あのさ、別に騙されやすいわけじゃないから。私」
相川さんからあからさまな溜息が一つ。
「早乙女君だから、了承しただけ。バカっぽいし、嘘とか吐けなそうじゃん」
「…あぁ、そうですか」
「まぁ、だから変な心配は無用」
「…はーい」
熱く息巻いていた俺は何処へやら、急激にショボくれた。
「本当、早乙女君って変人」
「あ、また言った!」
「だって意味分かんないんだもん」
そう言いながら、相川さんは笑っていた。
「しかも別に、早乙女君の為じゃないし。そもそも、ウチの兄ちゃんが男らしいってとこに疑問感じるんだけど」
「いや、それは大丈夫。あの人は完全に俺の理想像」
軽く片手を上げる俺。帝様が間違っている筈はない。
「まぁ、早乙女君が良いんなら良いけど」
「うん!ほんっとにありがとう、相川さん!!」
「早乙女君の為じゃない。私が変わる為」
呟くようにそう言う相川さんは、何処か寂しげだった。美少女で、特Aで、言いたいこと何でも言えちゃう彼女にも、やっぱり悩みはあるらしい。
変わりたいと願う相川さんは、きっと今の超毒舌キャラである自分が好きじゃないんだ。俺だって、「可愛い南ちゃん」は好きじゃない。
「俺、何でも協力するから!」
「はいはい」
「相川さんが俺に頼んで良かったって思えるように、めっちゃ頑張るよ!」
「自分のこと考えなさいよ」
「それも頑張る!」
「…バカ」
また呆れ顔で溜息。ゆっくりと歩き出した相川さんに、俺もニヤケ顔でそれに続いた。
ーーこうして俺達は、側から見れば非常に異質な「秘密の協力協定」を結んだのだった。
変わりたい俺と、同じく変わりたい相川さん。二人揃えばきっと、理想通りの明るい未来が築ける筈だ。
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