第四章「いざ脱却の為に」

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漫画は漫画、それは分かってる。けど実際、帝様は存在してた訳で。中身はまだ分からないけど、見た目や雰囲気に関しては正に理想通りのパーフェクト。俺がこの目で見たんだから、間違いない。 「そうかもしれないけど、そうでもない」 「はぁ?意味分かんね」 それは相川さんのお兄さん、って言うとそこで相川さんと俺の友達以外の繋がりがバレてしまう。それがバレれば、勘の鋭い理人に相川さんのことまでバレるか、そうでなくても怪しむくらいはするかもしれない。 「理人の言ってることは分かるけど、別に努力するのは悪いことじゃないじゃん」 ドSが三次元では痛いかどうかは、この際今は置いておく。 「中学の頃は、嫌がっててもそこまでじゃなかっただろ?」 「それは、高校になったら自動的にシフトするかと思ってたからだよ」 「割と顔完成してる中学時代にあんだけ可愛けりゃ、高校入ったって可愛いままだろ」 「…身もフタもないな」 「てか別に、可愛い南ちゃんのままで良くね?」 「だーかーらー、そのままでモテまくりの理人には分かんないって!」 「お前だって、モテてんじゃん」 サラッと言う理人に、俺は驚愕の目を向けた。 「お前の目は節穴か!?中一から今までずっと一緒にいる癖に、俺がモテないことも分かんないの!?」 息巻いて言うけど、良く考えたら悲しすぎる台詞だ。 「節穴はお前。昔だって今だって、周りに女子めっちゃ寄って来んじゃん」 「それは、友達的なアレだろ!女みたいで話しやすいとか緊張しなくて楽とか、そんなんしか言われたことないぞ!?」 「だから、それが告られる一歩手前って何で分かんないかなぁ」 「え!?全く全然これっぽっちも分かんない!」 「お前の良さを褒めてんじゃん」 「可愛いって言われても嬉しくない!」 「実際可愛いんだから、仕方なくね?嘘でもカッコイイって言われたいってこと?」 「それを嘘じゃなくす為に、努力しようとしてんだろ!?」 ついつい熱くなるけど、理人は至って冷静。それがまた悔しい。 「あのさぁ南、そういう素直なのがお前の良いとこだけど、あんま真っ直ぐすぎると大事なもん失ってることにも気付かないまま終わるぞ?」 「ごめん、益々意味分かんない」 「まぁ、兎に角だ。あんま突っ走りすぎんなってこと。今のお前も、充分持つもん持ってると俺は思うよ」 おぉ、もしかして褒めてる?レアだ。 「後もう一つ。相川さんに深入りすんのは、辞めとけ」 「…は!?」 「深くは聞かんけど、あの子はお前には無理。性格どうのこうのじゃなく、お前には合わん」 「…余計なお世話。てか、ただの友達だし」 不満げに呟けば、理人は薄く笑った。 「何にせよ、南ちゃんはずーっと俺の可愛い南ちゃんで居てくれよーん」 珍しくシリアスモードだったのが嘘みたいに、普段のチャラけた理人に戻った。抱きついて来るのを、腕でグイグイと押し返す。 「だから、そういうのが嫌なんだろ!!」 俺もそれに合わせて、普段通りに戻る。ほんの少しだけ感じた違和感には、気付かないフリをした。
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