マトリョーシカ

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 友達の家に飾られていたマトリョーシカ。  ちょっと興味が湧いて、中から人形を取り出した。  色や柄、一体ずつの顔など、細かな違いはたくさんあるが、基本的には大きさ以外、ほとんど変わらない人形が次々出てくる。  はたして、どこまで小さなサイズの人形が出てくるのか。  興味が湧きまくり、どんどん人形を取り出していったら、最初と比べてかなり小さなサイズになった人形が動いた気がした。  サイズ的にこれが最後っぽい。だから動く仕掛けのある人形が仕込まれてるのか? それとも動いたように見えたのは気のせいで、まだ中に、さらに小さな人形が入っているのだろうか。  造り的にはまだ明けられそうだったので、それも開けてみようとしたら、さっきまでは俺の様子を見ているだけだった友達が、それ以上はダメだと言ってきた。 「けど、まだ中に何か入ってそうだぞ?」 「うん。多分…いや、確実に入ってる。だからこそ、そいつは開けちゃダメなんだ」  意味が判らず、ただ人形を見つめていると、友達がジェスチャーで、人形を耳に当てろと指示してきた。  中から何か聞こえてくる。喋る声のようだが、どこか外国の言葉らしく、何を言っているのかさっぱりだ。 「これ、何語? 何て言ってるんだ?」 「言語はロシア語だよ。ちなみに、聞こえる言葉の意味は、『早く開けろ食わせろ』だそうだ。音声録音して、ロシアの友達に翻訳してもらったから間違いない」  開けろはともかく、食わせろ?  何で人形がそんなことを言うのだろう。そう問いかけようとしたが、友達の顔を見て、俺はそれが愚問たど気がついた。  開けちゃいけないっていうのは、つまり、そういう…。 「…捨てないのか?」 「それはそれで怖いから。厳重に閉じ込めておくことに決めたんだ」  友達の言葉に、俺はそうかとだけ返した。  俺もマトリョーシカ人形をちょっと欲しいと思いかけてたけれど、この話を聞いて思った。入手するのはやめようと。 マトリョーシカ…完
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