翌日

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・:*:・:・:・:*:・ 始業10分前。 出勤してきた田中が暁里の隣で今日の準備を始めたと思ったら、何か変な空気が流れるのを感じた。 暁里は左手を右手で覆い、焦った口調で田中に言う。 「あ、別に大した物じゃないの。 …そう! 男避け? みたいなもの。」 それを呆れ顔で田中が眺める。 「お前、突っ込まれて困るんなら、付けて くんなよ。 誰に貰ったのか、だいたい察しはつくけど、 どうせすぐにバレるんだから、堂々と してろ。 贈った方もその方が嬉しいと思うぞ。」 くくっ 誰に貰ったのか分かるんだ。 暁里に想いを寄せてた田中にはイラッとしたこともあるが、こいつは人間的には嫌いなタイプじゃない。 寧ろ、さっぱりとした性格は、部下ではあるものの友人になれそうな人好きのする男だ。 「え? そう…なの?」 そう言いながら、暁里は俺に視線を向ける。 くくっ 全然隠せてないし。 「当たり前じゃん。 それって、『俺のものだから手を出すな』 って事だろ? だったら、『私はあの人のものです』って 堂々と言ってくれた方が、男としては 嬉しいに決まってる。 ねぇ、部長?」 は!? そこで俺に振るか!? 田中は、意味有り気に俺を見る。 俺は、苦笑いを隠すことなく、 「そうだな。 もう無理に隠さなくてもいいよ。」 と暁里に言った。 「ほんとに?」 暁里が俺に聞くから、 「あぁ! もう! だからって、俺を挟んでラブラブ光線を 出すな! 堂々としてるのと、会社でイチャつくのは 違うんだからな!」 と田中が苦言を呈す。 ま、確かに。 悪いな、田中。
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