食事にて…

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「そういうものですか? 私は普通だと思ってやってましたが…」 瀬名はそう言ってワインを飲む。 ん? 瀬名のワイングラスを持つ指先に綺麗な砂浜が見えた。 「ネイル…」 「え?」 「いや、ネイル、綺麗だな…と思って。 流行りなのか、それ?」 今朝、ちょこさんのダイアリーで見たのとそっくりのネイル。 爪が短めなところまで、よく似ている。 「これは、知り合いのネイリストさんに やってもらったんです。 オリジナルなんですよ。 指先に砂浜の海岸があるなんて、 素敵ですよね。」 「ああ。 上手いもんだな。」 ちょこさんと同じネイルで、名古屋に通学圏内の場所に住んでたって… そういえば、ちょこさんは、今日、上司と食事で気が重いって書いてた。 上司って、まさか、俺!? じゃあ、瀬名は、ちょこさんだ! 俺は、動揺を悟られないよう、努めて平静を装う。 俺はちょこさんを見つけた喜びや興奮をひた隠しにして、食事を終えた。 食後、俺は瀬名のマンションへと車を走らせる。 「今日は、ご馳走様でした。 それに、また送っていただいてありがとう ございました。」 瀬名がペコリと頭を下げる。 「いや… それじゃ。」 俺は、自分が『クマ』だと打ち明ける事なく、帰路に就く。 瀬名がちょこさん… 道理で気になるはずだ。
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