レッド・プラネットへの新婚旅行

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 二十三世紀は宇宙開発の世紀と言われて久しい。聖蘭(せいら)と結婚式を挙げた僕は、一番人気の新婚旅行先で火星に行くことになり、新婚夫婦が多いツアー旅行に参加した。  結婚式場も平日が安かったので、平日、中部国際空港から、火星行きの宇宙旅客機に乗り込んだ。LCCと呼ばれるローコストキャリアの宇宙旅客機だ。 「火星は英語では、レッドプラネット、赤い惑星と呼ばれてるんだ」 「わーっ、タツ君って相変わらず博識」  この前、インターネットで調べて知った知識を披露する。宇宙旅客機の窓から流れる景色は、空色の地球だ。  窓側の席は聖蘭(せいら)に譲った。聖蘭(せいら)は、窓に張り付くようにしながら、地球を眺めている。 「あれが僕らの地球さ、奇麗な星、あ、遠くなってくね」 「タツ君、自撮りしよ」  僕は急いでスマホと、自撮り棒を取り出す。自撮り棒にスマホをつける。聖蘭(せいら)の横で、窓に背中を預ける。見えない椅子があるつもりで、膝を直角に曲げた。 「タツ君、笑顔でピースして」 「うん」  僕は、か、かなり無理のある姿勢だ。笑顔を作り続けて、地球を背景に、何枚も2ショット写真を撮った。聖蘭(せいら)と二人で画像をチェックしていた。聖蘭(せいら)が満足顔だ。僕は席に戻って足が疲れで、少し震えている。聖蘭(せいら)が楽しいなら僕も嬉しい。
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