氷の月

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女慣れした男が好き。 流行を取り入れた髪型とファッションをしている人がいい。 どんなバカな事をしたのかをふざけて話す彼らのテンションが好き。 私も軽かったし、浮気なんてお互い当たり前。 それで喧嘩をしたり別れたりするのも、当たり前。 軽い男は財布の紐も軽いから、プレゼントをたくさんおねだりすることができる。 交際人数が増えるたび、私の部屋には物が溢れていった。 気付けば友達と”いかに高いものを買ってもらったか”を勝負してたりして……。 そんな軽い恋の連続。 「葉音?」 大輔に名前を呼ばれてハッとする。 「何か急に、昔の思い出がよみがえっちゃった……」 「ごめん」と苦笑う私に大輔も笑う。 「それ死ぬ前の走馬灯なんじゃない?」 だなんてからかいながらも「気分は悪くない?」って気遣ってくれる優しさにキュンとなる。 「大丈夫だよ。ありがとう」 自然とこぼれた感謝の言葉に、ほんの少しだけ打算を織り交ぜた笑みを見せると、大輔も私にキュンとしたようだった。 ゆっくりと太陽が海の底へと落ちていく。 レンタルしていたパラソルを片付けて、水着から服へと着替えて、茜の彼氏の車へ順番に乗り込む。 「荷物貸して」 私の荷物を受け取ってくれる大輔の笑顔と歯は、日が落ちても相変わらず輝いていた。
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