Prelude -前奏曲-

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入り口のドアにはめられた、四角いガラス窓から中を伺った。 音を立てないように、そっと。 外観と違わず中も古臭くて、机やイスからは年期を感じる。 埃の匂いが漏れてきそうで、私は瞬間的に眉を潜めた。 「……あれ?」 ピアノは確かにそこにあって、その前には人が座っていた。 ――ピアノ=女。 そういうイメージのあった私は、このピアノも女の子か先生が奏でていると思っていたのに。 でもそこに座っていたのは“女”や“女の子“じゃなくて。 「オトコォ?」 意外な姿を目にした私はつい、声を張り上げてしまった。 それに音を止めてしまうピアノ。 だけど、背筋をピンッと伸ばしてピアノに向かっている、制服を着た男の子が私の方を見ることはなく……。 早朝の学校。 使われていない旧音楽室。 そこでピアノを弾く男の子。 「怪しい」 と一瞬、思ったものの、私には補習の方が大事。 「ぎゃっ、約束の時間過ぎてるし!!」 謎を暴きたいと疼くココロを無視して、慌てて靴を履き替えると職員室へと向かった。
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