柏木くんのこと 2

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柏木くんのこと 2

 柏木くんのことが頭から離れない。寝ても覚めても柏木くん。ああ、柏木くんはなんでそんなにかわいいのか。というわけだから、考えてみた。柏木くんの魅力というやつをな!  小説における萌えキャラの魅力というのは実に単純で、イラストと会話文。多少の言動くらいしか要素がないはずだ。金閣寺はイラストなしの小説なのでまあ、会話文と言動だけ見ればよろしい。  しかし柏木くんのせりふは現代では実に不適切なものが多いな。  決めぜりふなんか「吃れ! 吃れ!」だからな。  ほぼ初対面で「それはそうと、君はまだ童貞かい?」なかなかキレたやつである。そして溝口は答えてないのに(重要)、こいつはぺらぺら自分の童貞喪失譚とか喋りはじめる。喋りたいのな、どうしても言いたいのな。もうこの時点でだいたい好きだよ!  柏木くんの登場シーンはまあおおむね、女の話か金の話だ。ほとんど女がらみで出てくる。視点が溝口なので、実際どうだか知らんが溝口にとって柏木くんはモテる男なんだろう。読んでいてもそれは納得だ。柏木くんはモテる。モテないわけがない(確信)。  基本的に柏木くんはゲスい。そしてそれは彼の精神性をとてもよくあらわしている。なんでゲスくなるのか、というと、柏木くんの思い込みが激しいからである。 ・生まれつき身体障害者→どうせ俺なんてモテない→女なんて嫌い→どんな手を使ってもいいやどうせあいつらバカだもの→ゲスの極み  なんとも理屈の通ったバカという感じがする。頭のいい人間が他人を見下しながらもその実他者からの承認を求めてやまない、というようなことは現実でもよく見かけるもので、そして柏木くんの場合はそれが「自分のせいではなかった不治の障害」の一点に帰結しているのが、美しい。
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