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わりとキレてる柏木くんが、ちょっとキョトンとしてたところがあった。かわいかった……。
柏木くんと溝口のオリジナル公案で、なんと溝口が勝った時だ。人生を耐えるのに必要なものは何か、という問いに。
柏木くん「認識」溝口「行為」議論自体は柏木くんがリードしている。
というか、知能がだいぶ違うからしょうがない。柏木くんのやや仏教ベースの屁理屈が長々とこねておるのは要するに「障害はあるけど、受け入れるしかないよね。美しくはないけど、美しさと寄り添うことならできると思うんだよ」程度の内容に聞こえる。
ものすごく、インテリくさく喋ってるけど。柏木くんはこの内容を、溝口にしか語れない。健常者に言うには屈辱が過ぎるんだろう。
でも溝口がこの小説の中で唯一凄かった点がここにあって、「私は美しくないなら、美しいものを手に入れるという行為をすることで、障害を乗り越える」と言った。さすがの柏木くんが「大仰に目をみひらいた」んだからそういう意味なんだろう。
やっぱり、柏木くんはどこか常識的なんだな。見た目はだいぶキちゃってるけど、中身が純粋なんだよ。
手紙の中身「死ぬな」だって言ってたし。それ、嘘じゃないと思う。このひとは、常識に裏打ちされている。
ああなんてかわいそうで、美しい柏木くん。どんなにキレても騒いでも、まっとうなところから逃れられないその生き様が、うるわしい。
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