タヌキとキツネのばけくらべ

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 むかしむかし、ある森の中にタヌキとキツネがいました。  タヌキとキツネは、いつも会うたびに何かとはり合っています。なぜなら、2ひきとも人間や動物にばけることができるからです。  今日も、森のおくのほうへタヌキとキツネがやってきました。 「キツネさん、今日はぜったいにすごいのを見せてやるぞ!」 「タヌキさんには悪いけど、今日も勝つのはこのおれさ」  いよいよ、2ひきのばけくらべの始まりです。さいしょは、タヌキがその場でドロンとけむりにつつまれました。 「どうだ! 力強くて元気な男の子の金太ろうにばけたよ!」  タヌキがばけたのは、赤いはらがけをつけた金太ろうです。金太ろうにばけたタヌキは、力持ちであることをしめそうと、近くにある大きな岩を持ち上げようとします。 「うぐぐぐぐぐっ、うぐぐぐぐぐぐぐっ……」  大きな岩をひっしに持ち上げようとする金太ろうですが、ぜんぜん持ち上げることができません。 「はっはっは! これくらいのこともできないようでは、金太ろうとはいえないぞ」 「それだったら、キツネさんはちゃんとばけることができるんだろうな」 「できるさ。おれがばけるのはこれだ!」  キツネがクルンと回ってばけると、そこにあらわれたのはかわいい子グマです。子グマにばけたキツネは、あることを思いつきました。 「金太ろうと子グマにばけたことだし、今からおすもうをしたいけどいいかな?」  金太ろうといえば、クマとおすもうを取ることでおなじみのお話です。その場で向かい合うと、すぐに正面からぶつかっていきました。 「ぐぐぐぐぐぐぐっ……。ぜったいに負けないぞ……」 「こっちだって、金太ろうには負けたくないぜ」  おとぎ話とはちがって、こちらのほうは金太ろうも子グマもなかなか土をつけることができません。そんなとき、森のしげっている中からガサガサと音が聞こえてきました。  そばにある木には大きくひっかいたあとがはっきりと見えますが、おすもうをしている金太ろうも子グマもそれに気づくことはありません。  しかし、大きな草におおわれているところを進んでいる大きな動物が少しずつ近づいてきています。これを見たタヌキとキツネはもとのすがたにもどると、すぐにその場所からにげだしてしまいました。  草のしげったところから出てきたのは、大きい体つきのクマです。クマはまわりを見回していますが、そこにはキツネもタヌキもいません。 「あれあれ? さっきまで何かいたような気がしたけど……」  クマはだれもいないことにふしぎそうに思いながら、ふたたび草むらに入って山おくへもどって行きました。
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