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「タオル、引き出しに入ってる、ということは敷く?」 ベッドの脇に立ったキシが聞いた。サイドテーブルの引き出しに、タオルは確かに入れていた。 「引き出し、全部開けたな」 「そんなつもりないけど。結果的にはそうね」 二段目を開けてタオルを出し、キシはそれを僕に放った。仕方なく体を起こしてタオルを広げる。彼はこっちに背を向けてベッドに腰掛け、おもむろに一段目の引き出しを開けた。 「おい、言ってるそばから次々開けんな」 キシは振り向いて、ローションのボトルを枕元に投げた。 「コンビニになかったので。在庫から使うけどいい?」 と言うので、思わず笑ってしまう。さっきのコンドームの箱をテーブルの上に出してから、 「脱いで」 とキシは言い、僕がTシャツを脱ぎかけた手を掴んだ。 「下だよ。脱ぐの」 「あ、うん」 「うつ伏せになる?仰向けがいい?」 うつ伏せに寝転がると、彼は僕の腰を掴んで仰向けにした 「何なんだ」 そのまま彼が片手で眼鏡を外して、サイドテーブルに投げるのを見ていた。その横顔は、夢でみたものを改めて見たような、懐かしいのに不穏な感覚を呼び覚まして、痛みになって体の奥を刺した。 何もかもが好きで、痛みとして感じるしかないほど、激しく心が動いた。 キシの呼吸が乱れて時々声が漏れるのを聞きながら、自分の声が混じって聞こえる度に口を固く閉じようとしてまた声を上げていた。気持ちいい?と聞かれて、目を開けて頷く。 「痛い?」 首を横に振る。涙か汗が散るのが一瞬見えると、彼は動くのをやめて、僕の名前を呼んだ。 「気持ちよすぎ」 「キシさん」 キシは返事の代わりに、口元だけで笑ってみせた。 その目。彼の手が頬に触れる。そっと指先で触れたまま、見下ろしているその目。 泣きたいわけではないのに溢れてくる涙を、止めようとすると喉が震えた。 「なんで、そんな目で見るの」 「そんなって?」 「頭がおかしくなる、そんなふうに見られると」 キシはちょっと体を起こして、さっきのタオルがそのへんに丸まっているのを僕の手に押し込んだ後、両脚を掴んで深く入れてきた。僕はタオルを口に押し当て、キシが奥を突き上げながら時々唇を噛むのを、途中までは見ていた。 やがて僕の手からタオルを取り上げ、覆い被さるように体を重ねた時、 「こっちは、とっくにおかしくなってんだよ、上野くん」 と、キシは弾む息の下から呟いた。
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