絶望のカナリア

1/1
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

絶望のカナリア

やがて二人は、結ばれる、その約束が力になる 気持ちを、持ち直し再びチャレンジの 日々が続く中 久々に海斗に出会った。 「少しは、落ち着いたか?」 「うん!色々揺れたけどね、でも......大丈夫」 「親から聞いた話しだけど、お前ん家に 50代くらいの男性が頻繁に訪ねて 来るらしいけど...... お前......父親の顔、知らないんだよな」 「うん!2歳の時だったからね...... 覚えて無いし写真も無いし...... お母さん!話したがらないから 働かず遊んでばかりで 苦労したみたいだからね」 「まっ!父親かどうか、未だ解らないしな! 例えなんかあっても、 近所の人も皆んな味方だからな」 「ありがとう!おばちゃんに聞いてみる」 「一周忌の日!決まったらまた、 教えてくれよ」 そうして二人は、別れた。 翔さんの都合も聞いて帰る日を決めないと。 「おばちゃん!ご無沙汰してます。 一周忌の日、決まったので......連絡を」 「みいちゃん!もしかしたらね、 お父さんかも知れない人が頻繁に 訪ねて来るんだけど、どうする?」 「う--ん! お母さんは嫌がるだろうけど......私は もし父親だったら会ってみたい! 一周忌の日を、教えてあげて下さい。 もし父なら、私!会います」 「わかった!ご近所さんにも 伝えておくからね」 私は翔さんに、お父さんかも?知れない人と、 一周忌に、会う事を伝えた。 皆一応に「今更、父親ヅラして私を、 どうにかするのでは」と心配してくれる。 一周忌の日......お母さん!ただいま! ご近所さんの協力も有り小さいながらも 無事に終える事が出来ました。 心の中も一区切りが付き、 後は翔さんとの事と そう考えながら、 疎らに来られる弔問の方の、 お相手をしていた時 「みいちゃん!例の人来たよ」 私は頷くと、緊張で顔が強張ってしまい 少しでもほぐそうと、深呼吸を繰り返す。 「大きく......いや......いい娘さんになったね」 父......なんだろうか?私が小さい頃から聞いて いたイメージとは、かなり、かけ離れていた。 キチッとした礼装に、背はソコソコ高く 白髪混じりの、遊び人と言うよりは ダンディなイメージ! そりゃそっか!もう18年くらい経つから 流石に、遊び人では無いか! 私は、かける言葉が見つからず会釈をするだけ 「カワノコウタと言います」 おばちゃん達が、訝しげに見ると、 徐ろに免許証を差し出して見せた。 間違いなく、河野洸太!私の父でした。 上がってもらい、お線香をあげ手を合わせる。 「美樹!いや......お母さんから 突然連絡をもらった時は、正直驚いた! 末期で......もう助からないと 聞いた時も...... あなたが夢に向かって頑張ってる事を 聞いて美樹が若かった頃を思い出し...... 私が原因で夢を諦めさせた事もあり、 償いではないけど、 協力させてもらいたいと......」 「お母さんからは悪口しか...... 遊んでばかりで」 「だろうね!事実だから。 不本意だったと思うよ 僕に連絡した事は、でも残りの命と あなたの夢の大きさに、 美樹は決断したんだと思う」 そこへ用事を済ませた翔さんが帰って来ました 「あっ!翔さん!お帰りなさい!」 私は、父を紹介しようと思った瞬間...... 私は耳を疑い......言葉が......つまりました。 「おぉ翔太!兄妹仲良くしてくれて良かった」 「何であんたが此処に居るんだ! 兄妹?...... 何!言ってんだよ!あんた!」 えっ!ちょっと......まって......何?......これ? 翔さんも私も母子家庭で! 翔さんは父親似で!父親の故郷は此処! 夢の為とは言え東京に、翔さんの家に行く事を 許してくれたお母さん! 余り人に興味を示さない、お母さんが翔さんの 名前だけは細かく確認していた! 嫌な予感が、どんどんと組み合わさって行く! 「うそ......嘘だ、私と翔さんが兄妹って」 私はショックで、家を飛び出してしまいました 無我夢中で走りながら、兄妹と言う文字が、 頭の中を駆け巡る、何度も!何度も! その度に、溢れる涙 偶然に、通りがかった海斗に出会う! 「美月!喪主が、こんな所に、 居ていいんか?」 涙で、ぐしゃぐしゃな顔、ただ聞き慣れた声に 反応だけで振り返った私に、 「何があった?ただ事じゃないぞ、 その状況!」 「海斗......わたしと......翔さん...... 兄妹だって...... お父さんが、同じで......異母兄妹......って」 「とっ......とにかく此処じゃなんだ! 家来いよ!」 私は、支えられる様に、海斗の家に着いた。 「あら!美月ちゃん...... どぉしたの?その顔?」 「話しは後だ!美月!部屋に行くぞ」 私は、渡されたタオルを、頭から被りもらった飲み物を、両手で持ちながら暫く、 沈黙が続いた 口火を切ったのは、海斗からだった。 「これからどうするんだ......もう無理だろう! 兄妹なら......」  言葉が、みつからない! 「お前ら......その......まさか?そんな関係には」 「翔さん!そんな人じゃない! 私からは何度か誘ったけど、 私の夢......大切にしてくれて、 決して一線は越えなかった!」 「あいつ!知ってたんじゃ無いのか?」 「それは無いと思う!」 「なんで......わかるんだよ!」 「何度か、キス......したから」 「あっ......そっ......か」 私はタオルを取り未だ薄暗い部屋で、 海斗のシルエットを見ていた。 「俺に......俺にしろよ!美月! 今のお前......俺は見てられない!」 「なに......それ!女の子が...... 弱ってる時に......」 「だからだよ!悪いかぁ」 そう言うと、海斗がスーッと近付いて来たかと 思った瞬間、お酒の匂いの海斗の唇が強引に 私の唇を押さえ込んだ。 「嫌っ!やめて」押し返すものの、 ブラウスの中に海斗の手が...... 「お願い......やめて......」 「電気も付けないで、何してるの」 海斗の、お母さんの声に怯んだ瞬間、 私は海斗をつき飛ばし涙ながらに部屋を出た。 「おばさん!ごめんなさい」 「あっ!美月ちゃん?」 「海斗!あんた......美月ちゃんに」 「なんもしてねぇよ!」そう言うと、 私を追って来た海斗! なんで私が、こんな...... 「美月!」翔さんの声! 私は、その声がする方に 私は翔さんの後ろに隠れた。 ブラウスのボタンが千切れ、乱れた服を見て 追って来た海斗に翔さんは激昂する。 「俺の家でも、そうだが 美月に対して異常だぞ!」 「異常?血を分けた兄貴の癖に、 美月を好きに、させる方が...... 異常だろうが!」 「やめて!翔さんも知らなかったんだし、 好きになったのは私から...... だから......もう......やめて」 「何!騒いでるんだ!警察呼ぶぞ」 「とにかく......今は、お互い頭冷やそう!」 と言うと、私を連れて足早に立ち去った。 家に戻ると施錠されてた家には、誰もいない。 「お父さんは?」 「美月には悪いが、 俺はあいつを許せないんだ! 俺が理性を保っている間に消えてくれって 言った」 「そう......」 「もう、キスも抱いても、もらえないんだね」 「この事実は変えられない!残酷だけど...... でも、兄貴として妹を支える事は出来る!」 「妹......か?此処に帰って来ると...... 悪い事ばかり お母さんに見送られて向こうに行って 帰って来たら お母さんが居ない!何もかも空っぽな家! また向こうに帰って翔さんとひとつになる 約束して区切りに帰って来たら 兄妹だったって......」 「美月は、どうしたい? 辛いなら二人......距離を置くか?」 「今は、未だ考えが......まとまらない」 「美月がいいなら、帰ろう」 「うん、帰りたい」 家は、暫くまた面倒を見てもらう事に。 私達は辛い思い出から逃げる様に 故郷を後にした 帰って来ても何処か、ぎこちなく、 あの頃の様に笑えない日々が1ヶ月程、 続いた。 私の頭の中に時折、海斗の言葉が...... 「兄貴の癖に、美月を好きにさせて」 翔さんは本当に...... 知らなかった?知らなかったからキスをした? 知っていたから、私を抱かなかった? お母さんの手紙の事も、お金の事も翔さんは 私には言わなかった! まだ、何か隠してる?私は翔さんの部屋に入り 手紙を探した、そして......見つけた。 「翔太さんと美月の事で重大な事があります、 今はまだ言えませんが、それまでは美月を 大事にして下さい」 何......これ!翔さんも......薄々気付いてたの? なのに......私とキスしたの? 書きかけの小説は......義理の兄妹の恋愛もの 私は、小説の題材?ただのモデル? 私は心とは裏腹に、 どんどん翔さんを疑って行く 疑心暗鬼になつた私は遂に翔さんと...... 「お母さんの手紙?部屋から......勝手に?」 「知ってたの!知っててキスしたの?」 「最初は知らなかった! 手紙を見て不安を覚えて、 でも調べようとしなかった! いや、真実を知る事から目を背けた、 逃げたんだ! でも、あの時のキスは愛しさから 男としてだ......兄としてじゃない」 「私は純粋に翔さんを愛した!なのに...... 少しでも不安があるなら、 言って欲しかった! お互い話し合って支え合うて言ったのに...... もう!一緒には、いられない」 私は簡単に荷物をまとめた鞄を持って 静かに家を出た、 彼?なら優しく引き止めるはず でも彼は、私の中には、もう居ない。 降り出した雨の中声をかける人が...... 海斗だった あの事、以来会ってはいなかった。 「あの時は、ごめん! 酒のせいにはしないよ!」 「うん!私もキス迄は許しちゃったし」 私は翔さんの事を話した。 「お互い、ずぶ濡れだし、家来るか? ぜっ!絶対何もしないから」 私は頷き、着いて行った先は小さな1LDK 「シャワー浴びた方がいい」 雨で冷えた身体を温め髪を乾かし 「海斗!ごめん!パジャマ忘れて」 すると大きめのジャージを貸してくれた、 まだ少し湿った髪をタオルで拭きながら 少し開いた部屋の壁に飾ってある写真を見た。 「こんな写真!私、持つて無い」 「お前に内緒で、友達に撮ってもらった」 「ふふっ!ストーカー?」 「撮ったの友達!俺じゃない!」 「懐かしいねぇ!」 「ずっと一緒だったからな! 一緒に寝た事も 風呂入った事もあるんだぞ」 「子供の頃じゃん」 「ありがとうね!海斗」 「おぅ!」 思えば私だけを、見ててくれた海斗! 本当に私の事が好きなんだなぁって 今更ながら思う 翔さんを忘れなきゃいけない! 海斗なら何の問題も無いはず! 「海斗!私の事......好き?」 「きぃ!聞くなよ!」 「じゃ......いいよ」 二人は崩れ落ちる様にベッドの上に、 絡み合う指と指、 海斗の吐息が首すじから胸へ やがて二人の吐息が激しく重なり、 熱を帯びた身体は愛を欲しがる様に、 衝撃的な痛みと共に、私は海斗を受け入れた! その時、涙がひと雫、溢れ落ちた。 痛みは身体の痛みなのか?心の痛みなのか? 今の私には、知る勇気は無かった。 そして二人は......余韻を確かめる様に...... 朝まで深い眠りにつくのでした。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!