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今日も、俺の目の前には『ゴゴサンジ』を挿した花瓶がある。
「そろそろ咲き始めるぞ! はるー、早くこっち来いよー」
小説では、主人公の彼氏になったイケメンがこの花の名前を『ゴゴサンジ』だと勘違いしていたが、正式名称は『ハゼラン』だ。別名『三時草』とも言うらしいが。
「三時に咲くって言われてるけどな、実際には昼過ぎくらいからボチボチ咲き始めるんだ。赤いツボミが弾けて、中から小さいピンク色の花が開くぞ。よく見てろよ?」
「まえにも、おにいちゃんとみたことあるよね? うわー! いっこさいてるよ! こっちも、すこしピンクがでてきたよー! かーわいいー! ぱぱもきてきて! すごいよー」
呼ばれて覗き込んでいる彼もまた、感心頻りだ。
「良かったな。早く帰ってきたから、三人でこの花を見られたんだな」
そう言って、嬉しそうに花を眺めながら「おおッ! お喋りしてるうちに、後ろのツボミが開いたぞ! 可愛いな」そう言って、はると二人並んで楽しそうにしている。
昼過ぎから開花をはじめる『ゴゴサンジ』は、午後の三時にはほぼ全てのツボミが開いて満開になるのだ。
こんな、穏やかな夏休みも悪くない――
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