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「研究のテーマは決まった?」
今夜は大学病院でICUの責任者として勤務している彼と、久々に自宅で寛いでいる。珍しく緊急の呼び出しが無い静かな夜だ。
因みに、俺は大学で看護師の資格を取得後、新卒でICU勤務になって彼の下で働いていた。
まあ。いろいろあって、いま俺は彼のパートナーだ。
彼の勧めもあり、今年の春からは大学院に通いながら、彼の娘のはるも含めた三人で家族として暮らしている。
はるも久し振りに彼と一緒に入浴が出来て、ご満悦な様子で布団に潜り込んだ。俺は彼女が寝付くまでの間、いつも通り絵本を読み聞かせてやった。
はるが寝た後、軽くビールを飲みながらの四方山話の合間、夏休みの話題になった。
「一緒に行かないか?」
「俺は、今年はパスです!」
「そうか……。僕もそうしたいところだが、祖父の法事があるからなあ」
困った表情の彼が、言い訳をするように続ける。
「困ったなあ。はるにも会いたがってるし……」
「俺は大丈夫なんで、二人で行って来て下さい!」
――昨年、彼の実家にのこのこと付いて行った俺は、激しく後悔したのだ。
ハッキリ言うと、俺は彼の実家が大嫌いだ。
田舎でそこそこの規模の病院を経営していることが、そんなに『エライのか?』と思う程、横柄な彼の両親の態度に辟易した。
どうやら彼が病院を継がない事に業を煮やしているようだが、片田舎の人間にとって、『同性愛』は『病気』なんだそうだ――思い出すだけでも腹立たしい。
彼の親だから悪くは言いたくないが、よくもまあ、あんな両親から『こんなに素晴らしい』息子が授かったものだと、心から感心する。
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