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「あれ? 電気消し忘れて出掛けたのか――?」
自分らしくないなあ。等と思いながら鍵穴に鍵を差し込むと、何の抵抗もなく開く。
「おかしいなぁ……」
うまい具合に院の友達がつかまり、飲みに行った俺は、ほろ酔い気分で帰宅した。
電気がついていて、開錠されていて……、玄関には彼とはるの靴が無造作に脱ぎ捨ててある。そうか、帰って来てるのか!
「ただいま! あれ? 今夜帰る予定だったっけ?」
「ああ、お帰り。実は――」
「おにいちゃーん!」
はるが、彼の後ろから飛び出し、勢いよく俺に飛びついてきた。
ヒックヒックと、嗚咽が止まらない。
とにかく泣き続けるはるを宥めすかして布団に寝かせ、とっておきの絵本を取り出し読み聞かせると、漸く穏やかな寝息を立てはじめた。
田舎の慣れない環境に緊張したはるがお漏らしをしたことに、『男なんかと暮らしているから、孫娘がこんななのだ』と、彼を叱責する祖母の様子を見てしまったはるが、『おにーちゃんがいい! かえりたいよー!』と言って、大泣きしたという。
どうにも収拾がつかなかった事と、「僕も、自分の親ながら情けなくて、腹立たしかったんだ。だから、さっさと荷物を纏めて帰宅したんだ」という顛末だ。
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