愛しています

1/6
前へ
/186ページ
次へ

愛しています

「ーーふぅ」 原稿がきりのいいところまで書けたので、私はキーボードを動かす手を止め、小さくため息をついた。 締切はまだまだ先だけど、この調子だと前倒しで終わらせることが出来そうだ。 最近の私は、原稿を落とすことはおろか、行き詰まることもまったくと言っていいほどなかった。 樹さんと恋人になって、その後数ヶ月で結婚をして。晴れて新婚夫婦となってから、すでに半年が経っていた。 私は自分で購入した港区のマンションは人に貸すことにし、樹さんの六本木のマンションに転がり込む形で彼との新婚生活を送っていた。 「千春、原稿は順調?」 パソコンの前でぼーっとひと休みしていると、2個のマグカップ片手に樹さんが私の書斎へと入ってきた。どうやらコーヒーを淹れてくれたらしい。 彼はまだ、私の担当編集を続けてくれている。今日は休日なので、私が書斎にこもっている間はリビングでくつろいでいたようだった。 「うん、順調だよ。コーヒーありがとう」 近寄ってきた樹さんからマグカップを受け取り、私はコーヒーをすする。ミルク多め、砂糖はなし。樹さんは相変わらず私の好みを完璧に把握している。
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1046人が本棚に入れています
本棚に追加