キスが無いと無理なんです

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ーー彼は私より5歳上の28歳。18歳でデビューした当時から、私の担当編集だ。 180cm前後の長身に、ダークブラウンの切れ長の瞳が印象的の端正な顔立ち。瞳と同色の髪は、ところどころウェーブがかかっているが、だらしない印象はない。その無造作な髪型と、少し気だるそうな表情が、危険な色気を匂わせる美青年。 服装は、一般的なビジネスマンとは程遠い。紺のジャケットに、派手な柄の入ったシャツをそつなく着こなしている。スタイルの良い樹さんだからなせる技。 忙しい編集者にはあるまじき怠惰な気配を身に纏う樹さんだが、実はどこぞの会社(詳しいことは知らない)の御曹司らしい。確か、お父さんが映画配給会社の社長だったかな。 そのうちその会社を継ぐことになるかもしれないが、わりと物わかりのいいお父さんらしくて、とりあえず今は好きな小説に関わる仕事をしているんだって。 ーーまあ、現在彼が籍を置いている出版社も彼の母方の祖父が社長だそうなのだけれど。コネ入社かな。まあ仕事はかなりできるようだから、問題ないか。 イケメンで御曹司だから、社内では女性から絶大な人気を誇っているらしく、女遊びも激しいという噂だが、私はあまり興味がなかった。
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